2016-07-29から1日間の記事一覧

中村紘子と戦後日本のコンチェルト

そういえば、井上道義の指揮で後半がブルックナーの8番だったと思うけれど、東京交響楽団の定期演奏会で中村紘子が矢代秋雄のピアノ協奏曲を弾くのを聴いたことがある。たしかこの曲は、彼女が初演したはず。1967年の作品だから、まだ23歳のときですね。*戦…

日本におけるオペラ「真夏の夜の夢」

東京から聴きに来た人たちが、口々に、これはブリテンの珍しいオペラである、という前口上から感想を書き始めるのが、私には理解できない。こんなに珍しいオペラを6日間も上演するのは凄い、という誉めの前振りとして便利だからだと思うのだが、そもそも会…

「音楽の国」の妖精の言語

兵庫県立芸術文化センターのブリテン「夏の夜の夢」 - CLASSICA - What's New!東条氏のヌルい感想と読み比べると興味深い。ここではさらっと通り過ぎられているけれど、オベロンの妖精界が日本語、アテネの人間界が英語、というのは、東条氏が劇場関係者から…

「音楽の国」vs「複数の音楽」

消費の肯定を前面に打ち出してアートの世俗化・日常化に向かったように見える1980年代を経て、そのような動きに学問的な裏付けをあたえることを目指したはずのカルチュラル・スタディーズ、ニュー・ミュージコロジーが上陸した1990年代のこの島のクラシック…

芸術新潮にとってアートはおそらく非日常ではない

芸術新潮が創刊当初の1950年代から建築・写真・工業デザイン・ファッションをアートの領域として扱ってきたのは、アートを「日常」と地続きの位置、日常に埋め込まれた何かとして取り扱おうとしたとみるのがいいんじゃないか。週刊誌的なスキャンダルに積極…