アンジェラ・ヒューイット ピアノ・リサイタル

午後、大阪国際フェスティバルの一環。前評判が高く、CDを聞くかぎりでは、繊細なタッチで様々な想像をかきたてる演奏をしてくれる人と期待していたのですが、今回の公演、特にバッハ(「半音階的幻想曲とフーガ」、「フランス風序曲」)とラヴェル(「クープランの墓」)は、ディテールがほとんど聞き取れないままで終わってしまいました。

この音楽祭のやり方(ギターやピアノの独奏から、フル・オーケストラやオペラまで、すべて大ホールで演奏する)は、スタイルの多様化が誰の目にも明らかになった今のクラシック音楽の現状にそぐわない、と言わざるをえないかも。ショパンの夜想曲(As-Dur(Op.32-2)、Es-Dur(9-2)、c-moll(48-1))、特に前半2曲の、自然で、細部まで意識化されたカンタービレが、この日、一番幸福なひとときだったように思います。

今回、曲目解説を書かせていただいたわけですが、Es-Durの夜想曲については、結果的に、ヒューイットが装飾を独自に付け加えるであろうことを予言するようなものになりました。「弟子たちからみたショパン」や、弟子の楽譜への書き込みを再録したウィーン原典版などを知っていれば、予測できたことではありますが。