アルバン・ベルク四重奏団演奏会

イシハラホール。ヴィオラはイザベル・カリシウス、予告されていたベルク「抒情組曲」がシューベルト「弦楽四重奏曲変ホ長調」に変更され、この団体には珍しく、二十世紀作品のない、オール・シューベルト・プロになりました。

けれども、ハ短調の四重奏断章はキリキリと締め上げるような厳しい演奏でしたし、「死と乙女」は、「死」というよりも、ほとんど「殺戮」の音楽。第1楽章で甲高い悲鳴が上がり、第2楽章は、見えない恐怖に襲われる悪夢。第3楽章は、ナイフのように鋭いボウイングで鮮血が飛び散る光景にしか思えず、目を(耳を)そむけたくなりました。第4楽章は、もともと「死の舞踏」として書かれていると私は思いますが、副次主題の和音で、全員が音をぎゅっと絞り上げる様子は、首を絞めているみたい。ベルクのオペラやエゴン・シーレの絵画の精神に染め上げられたシューベルトという感じでした。

アンコールのモーツァルトのニ短調四重奏曲の第2楽章は、美しいものを愛撫するような、艶めかしくエロティックな演奏。

「音楽の都」の代表団のような体裁で来日して、こんなものを弾いて帰るのですから、恐ろしいグループですね。