ボロディン弦楽四重奏団演奏会

ザ・フェニックスホール。前半のベートーヴェン(弦楽四重奏曲第4番)とシューベルト(四重奏曲断章)では、ヴァイオリン、ヴィオラの三人の細い針に糸を通すような弾き方を、やや窮屈に感じました。設立以来のメンバーのチェロ、ベルリンスキーの厳密さを楽しむような態度に比べて、余裕がない感じ。

けれども、この演奏会の意義は、ショスタコーヴィチの最後の弦楽四重奏曲を弾いた後半に尽きていると思います。事前に、演奏者の意向で曲後の拍手をしないようにというアナウンスがあり、会場の証明を落として、譜面を照らす4つのライト(まるで4本の蝋燭のような)だけが灯る中での演奏。ほとんど拍子の感覚が失調した線的な多声書法とか、一つづきの歌を切り刻み、モンタージュ的に再構成したような部分とかを聴いていると、誰とも連帯することのできない環境での創造行為というのは、恐ろしいことだと思いました。ベルリンスキーは、そうした晩年の作曲者を直接知っているのですよね……。