シャガールのヴァイオリン〜中・東欧の村の楽士たちと20世紀音楽の前衛

ザ・フェニックスホール。19世紀東欧から20世紀に大西洋を経て北米へ、そして満州を経て日本へと伝播したロマ(ジプシー)とユダヤ人楽師(クレズマー)の音楽。市民社会的なネーションの垣根を横断するその地下水脈的な広がりを見極めたいという講師、伊東信宏さんの学問的関心と、ハンガリーで学んだ北住淳さん(ピアノ)、クレズマー音楽が恐いくらい上手い木野雅之さん(ヴァイオリン)らによるトリオ・ミンストレルの演奏が共振して、知的・音楽的好奇心をかきたてられるレクチャー・コンサートでした。穏やかなトーンで話は進みましたが、映像・音源資料や実演が実は豊富に組み込まれていて、講演としての完成度も驚くほど高いものでした。演奏曲目は、ディニク「ホラ・スタッカート」、エネスク「少年時代の思い出」、ショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲」op.67。