京都市交響楽団第493回定期演奏会

[追記あり]

夜、京都コンサートホール。大友直人指揮でメインはマーラーの交響曲第1番。大友さんは、常任指揮者に就任した年にもこの曲を取り上げていましたが、その時よりも落ち着いたテンポで、第4楽章のメロディの歌わせ方にこだわりを見せたり(その分、バスの動きがなおざりになって、やや「演歌的」ではありましたが……)、表現が緻密になっていたように思います。

驚いたのは前半のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。デュメイの独奏ですが、彼は曲が始まっても右手をブラブラさせたて落ち着きなく挙動不審で、演奏も、異常に指揮者に近寄ったり、終楽章では、ヴァイオリンの方へ向き直って何かをアピールするようなジェスチャーを示したり、唐突に早く/遅く弾いて挑戦的な感じ。

私は、本人がやりたい確固としたイメージがあって、オーケストラが思うように乗ってくれないので、自分のペースに引き込むためにどんどん表現が(グロテスクなほど)オーバーになっていったのかな、と想像していたのですが……。この演奏を聞いて、リハーサルで何か事件があって、故意にアンサンブルを乱すような弾き方をしていると感じた人もいたようです。

真相はわかりません。

ちなみに、デュメイの京響定期出演は、昨年ペーター・ツィマーマンがキャンセルした時の代役出演以来二度目。その時のモーツァルト(協奏曲第5番「トルコ風」)も、大胆にオーケストラを引き連れて動く自由闊達な演奏ではありました。

京響は、少し前はどんな指揮者にも柔軟に対応できるニュートラルなオーケストラとよく言われていましたが、大友さんのもとですっきりした演奏スタイルが固まってくるにつれて、良くも悪くも振り幅が小さいというか、ひたむきにどこまでも指揮者・共演者に付いていくという感じではなくなっているようにも思います。

色々ひとつひとつは小さな要因が重なって、結果的にかなり波乱含みの演奏(スリリングで盛り上がったのは確か)になったのかなという気がします。

(お客さんがかなり入っていて、拍手は相当続きましたがアンコールはなし。)

デュメイはその後も関西に滞在していて、12日には関西フィルを弾き振りすることになっています(いずみホール)。

ここでどういう演奏をしてくれるのか。同じように荒っぽい演奏だったら、そういう人なんだ、ということになるでしょうし。繊細な演奏をしてくれたら、京響での演奏がやはり何か特別な状況だった可能性が高いことになってしまうかも……。

こういう「裏読み」的な関心の持ち方は、あまり幸福ではないとは思いますが、12日の演奏会がどうなるか、気になります。デュメイの弾き振りは、純粋に楽しみではありますし。

[追記]
京響はこのあと創立50周年記念で各地を巡回して、11月23日には、大阪、ザ・シンフォニーホールで公演。そこでもマーラーの交響曲第1番を演奏するようです。

在阪オーケストラの合併騒動などで、関西のオーケストラの実力が話題になったときに、実演を(ちょっとしか)聞かずにそれぞれの楽団のイメージをもってしまっているのだな、と痛感しました。

先入観にもとづく食わず嫌い(聞かず嫌い)は罪(笑)。

ザ・シンフォニール公演は、京響を大フィルや他のオーケストラと同じ条件で聴く良い機会だと思います。是非。