エルサレム弦楽四重奏団

夜、神戸新聞松方ホール。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。前半が第1、12番、後半が第8番。

悠然と弾いている姿も、弓が弦に吸い付くような弾き方も、いかにも東欧から来たスタイルという感じですが、過剰にねっとりしたものではなくて、普通に上手いなあと思える演奏。今時のカルテットを聞き込んでいる人や、ショスタコーヴィチをコレクションしている人であれば、細かく論評できるのでしょうが、とりあえず、これだけ弾かれてしまったら、文句のつけようがない感じでした。

あまりに弾けてしまうので、ショスタコーヴィチにはもっと切迫した感じが欲しいと思う人がいるかもしれないと思うところもありましたが、第8番など、今の感覚というか、「1906年生まれなのに、こんな音を書いている」と面白がっているような不思議な響きがする瞬間があって新鮮でした。

それにしても、交響曲第5番直後に書いた第1番から既に「変な曲」ですし、こんなことを死ぬまでやり続ける執念は、単純な反抗とか、作曲衝動ではないような気がします。

ショスタコーヴィチは、確かにソヴィエト共産党には批判的だっただろうけれど、たぶん、反共自由主義の人ではなかっただろうと思います。もしも、ソヴィエト崩壊後まで生き延びたり、西側へ脱出することができたとしても、やっぱり、世の中の大勢には適応できなかったのではないか。同じような曲を書き続けて、ノーノとかラッヘンマンみたいになっていたのではないかと、ふと、そんなことを思いました。

既に生誕101年目に入っていますが、どういうわけか、ショスタコーヴィチの演奏会が続いています。