篠田正浩が語る武満徹

(補足:3/3分として、「交響曲とは」的な文章も書いてみたので、よろしければ、こちらもどうぞ。→id:tsiraisi:20070303#p1)

おお、これは必見かも。

NHK教育テレビで毎週火曜日に「私のこだわり人物伝」というのを放送していますが、3月の放送分は映画監督の篠田正浩さんが語る武満徹です。

http://yamaonosuke.blogzine.jp/honke/2007/03/post_4b8d.html

きっと、先月、大阪のザ・フェニックスホールでの映画上演つき講演会で披露してくださったような制作現場の話なのだと思いますが、

http://phoenixhall.jp/sponsor/series/2007/5/%E7%AF%A0%E7%94%B0%E6%AD%A3%E6%B5%A9%E3%81%8C%E8%AA%9E%E3%82%8B%E6%AD%A6%E6%BA%80%E5%BE%B9%E3%80%8C%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%81%AE%E8%B6%8A%E5%A2%83%E8%80%85%E3%80%8D

だとしたら、メチャクチャ貴重で面白いお話になるはず。

講演会での篠田監督は、会社(松竹)と対立してでも意志を通した、みたいなことを、サラリと当たり前のようにお話してくださって、本当に格好良かったです。

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ここには書くタイミングを逃していましたが、

フェニックスホールの講演会では、全編上映された映画「心中天網島」にも圧倒されたです。(早速DVD注文しました。)

心中天網島 [DVD]

心中天網島 [DVD]

他に、講演会では「乾いた花」(1964)と「はなれ瞽女おりん」(1977)のオープニングも見せていただいて、本当は「乾いた花」を全編観たいのですがDVD出ていないようなので、岩下志麻さんの代表作らしい「おりん」の方を注文。

はなれ瞽女おりん [DVD]

はなれ瞽女おりん [DVD]

(「心中天網島」を見てしまうと、岩下志麻さんが本当に凄い女優さんなのだとわかって、次々見たくなってしまいます。)

ついでに、「狂った果実」のDVDも注文しました。

狂った果実 [DVD]

狂った果実 [DVD]


フェニックスホールの講演会当日の配付資料に、片山杜秀さんの武満徹の映画音楽についての充実した文章があって、そこで、武満の最初の映画作品だと知ったので……。

この映画のスチールギターの音を聞いていると、若い頃の武満が無頼漢的な人だったらしい、とか、シュールレアリズムが発想の原点、という話がちょっと実感できる気がしました。(端的に「シュールな」音ですし、ダリとか、シュールレアリズムは、性的なものと切り離せませんよね。)

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それから……、

(もうすぐ都知事選だそうですが)「太陽族」と言うのでしょうか、石原慎太郎の作家デビューや弟、裕次郎の映画デビューというのは、この映画を観ると、本当に斬新で鮮烈だったのだろうな、と思います。(津川雅彦も岡田真澄も若い!)

ボート乗り回しているお坊ちゃんのメチャクチャな青春ストーリーですけれど、逆に言えば、石原慎太郎氏は、最初っから、こんな風にハチャメチャだったのかと、妙に納得してしまうところもあって……、政治家として支持する人も支持しない人も、投票前に、まずこの映画見てから決めるべきでは、と思ってしまいました。(よその自治体のことなので余計なお世話ですね……、すみません。)

それにしても、篠田監督の「乾いた花」(オープニングの音は本当に斬新)も石原慎太郎原作……。

石原兄弟の「太陽族」と、篠田監督や大島渚監督の松竹ヌーヴェル・ヴァーグと、実験工房の武満徹と、あと、黛敏郎・芥川也寸志・団伊玖磨の「三人の会」と。

当時のことを知らない私たちは、それぞれを文学史・音楽史・映画史の別々の出来事と思ってしまいますが、戦後の同じ時代の空気のなかで、とても近いところでやっていたんじゃないかなと、改めて考えさせられました。

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19世紀ヨーロッパの時代の空気感みたいなものを一番感じさせるのはオペラだと思いますが、20世紀の場合は、圧倒的に映画なんでしょうね。

ガーシュインのことを知りたかった黄金時代のミュージカル映画、ショスタコーヴィチを知りたかったソヴィエト映画、帝政ロシアの凄さは、ゲルギエフが指揮している「エルミタージュ幻想」の舞踏会シーンを観ておかないとダメなんじゃないかと思うし、フランス六人組の無責任な感じは……(フランス映画をほとんど知らないのですが)ジャン・ルノワールとかなのでしょうか。シェーンベルクを語るには、ギーレンが指揮しているストロープ=ユイレの「モーゼとアロン」と「昨日から今日へ」必見と思いますし(あの音楽映画を観るとオペラ「昨日から今日へ」が失敗作だとは言えなくなってしまう……)、武満徹も、サントラCDだけじゃなくて、映画本編をひとつずつ観ないといけませんね、きっと。

実は、数年前から「20世紀は映画だ」と勝手に思いこんでいて、最近はDVDで少しずつ色々な作品を観るようにしています。(音楽の参考資料……というのは名目で、端的に面白くて仕方がないので……。)

20世紀音楽 クラシックの運命 (光文社新書)

20世紀音楽 クラシックの運命 (光文社新書)


宮下誠さんの「20世紀音楽」は、「美術で読み解く20世紀音楽論」という感じの本でしたが、個人的には、「映画で読み解く20世紀音楽論」というのを是非、誰かに書いて欲しいと思っています。

いわゆる「映画音楽」に特化した歴史ではなくて、ハリウッドのヘイズコードとソヴィエトのスターリン国策映画は同時代現象なのだから、ショスタコーヴィチとガーシュインを並べて論じていいはずだ、とか、そういう切り口で、前衛・実験音楽も、ジャズもロックも、コルンゴルトもコール・ポーターもジョン・ウィリアムズもクレイジーキャッツも坂本龍一も全部ひとまとめにして書かれた本が読みたい!……妄想ですが。