「青年グループ」という青年のオペラ集団のこと(1953-1961/66年)

バルトーク「青ひげ」が1954年には日本初演されていたと前に書きましたが、公演団体は「藤原歌劇団青年グループ」となっています。

当時、藤原歌劇団に所属していたバリトンの竹原正三さん(1928-2006)が中心になって、ひたすら日本初演にこだわったグループのようです。演目を見るだけでも、センスの良さがキラキラ輝いている感じがします。ファリャ「はかなき人生」などの演出に山岡久乃さんのお名前が見えたり、イイノホールで若杉弘さんがピアノを弾いていたりもして……。

参考:林田直樹さんによる「竹原正三さんのこと」 http://blog.livedoor.jp/naoh123/archives/50751879.html

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このグループはいったい何だったのか? すごく気になるのですが、手許には日本オペラ振興会編『日本のオペラ史』といくつかの公演評しかなく、これ以上わたくしにはどうにもできそうにないので、同書をもとに、公演データの一覧だけを抜き書きしておくことにします。

(1) 「藤原歌劇団青年グループ」として

  • 第1回公演:プッチーニ「外套」(日本初演(ただしピアノ伴奏)) 演出・制作:竹原正三、指揮・ピアノ:福永陽一郎ほか 1953年4月2日、第一生命ホール
  • 第2回公演:バルトーク「青ひげ公の城」・プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」(いずれも日本初演(ただしピアノ伴奏)、「青ひげ」にはパントマイムが加わる) 演出・制作:竹原正三、指揮・ピアノ:福永陽一郎ほか 1954年4月29日、第一生命ホール
  • 第3回公演:モンテメッツィ「三人の王の恋」(日本初演(ただしピアノ伴奏)、妹尾河童が美術に参加) 演出:Victor Searle、美術:妹尾河童、指揮・ピアノ:福永陽一郎ほか 1954年12月5日、第一生命ホール
  • 第4回公演:メノッティ「霊媒」(日本初演(ただしピアノ伴奏)、栗山・河童の二人が組んだ初めての舞台) 演出:栗山昌良、美術:妹尾河童、指揮・ピアノ:福永陽一郎ほか 1955年6月7日、第一生命ホール

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  • [1956年は青年グループの公演なし]
  • 第5回公演:メノッティ「アメリア舞踏会へ行く」・プッチーニ「修道女アンジェリカ」(いずれも日本初演(ただしピアノ伴奏)、衣装に緒方規矩子、演技指導に山岡久乃の名前あり) 演出:竹原正三、美術:妹尾河童、指揮・ピアノ:福永陽一郎ほか 1957年6月6日、第一生命ホール
  • 第6回公演:プッチーニ「三部作」(管弦楽伴奏) 演出:山岡久乃・初井言栄(以上、青年座)・竹原正三、美術:三村亮太郎、指揮:金子登、管弦楽:ABC交響楽団ほか 1957年11月27日、日比谷公会堂
     → 1957年度第9回毎日音楽賞受賞
  • 第7回公演:ファリャ「はかない人生」(日本初演) 演出:山岡久乃・関矢幸雄、美術:妹尾河童、衣装:緒方規矩子、指揮:金子登、管弦楽:新東京管弦楽団ほか 1958年6月0日、九段会館ホール
     → このあと主要メンバーが藤原歌劇団を退団

ファリャ:歌劇「はかない人生」

ファリャ:歌劇「はかない人生」

ファリャのパリでの出世作。第3幕のスペイン舞曲だけでなく、素敵なオペラだと思うのですが。

(2) 「青年グループ」として

  • プロコフィエフ「三つのオレンジへの恋」(日本初演) 詳細不詳 1958年12月17日、共立講堂
  • ヴァイル「三文オペラ」(都民劇場公演として) 指揮:金子登、演出:青山圭男ほか 1959年7月14-21日、文京公会堂
  • ニコライ「ウィンザーの陽気な女房たち」(日本初演) 指揮:金子登、演出:青山圭男ほか 1959年11月22、23日、都市センターホール

(3) イイノホールでの4公演

  • ダルベール「出発」・マスカーニ「ザネット」・ヴォルフ=フェラーリ「スザンナの秘密」(いずれも日本初演(ただしピアノ伴奏)) 指揮:金子登、ピアノ:若杉弘ほか 1961年4月25日、イイノホール
  • ヴァイル「谷間の果て」・ホイビー「スカーフ」・バーンスタイン「タヒチ島騒動記」(いずれも日本初演、演奏形態は不詳) 指揮:金子登ほか 1961年5月23日、イイノホール

バーンスタイン:歌劇「タヒチ島の騒動」 [DVD]

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この公演のあとも当時は結構上演されたようですね。

  • バーバー「ヴァネッサ」(日本初演(ただしピアノ伴奏)) 演出:青山圭男、指揮:金子登、ピアノ:若杉弘ほか 1961年6月16日、イイノホール
  • リーバーマン「女房学校」(日本初演) 演出:青山圭男・増見利清、指揮:金子登、演奏:ラモー室内楽団ほか 1961年9月6、11日、イイノホール

(4) 5年間のブランクのあとの最終公演

  • シャルパンティエ「ルイーズ」(日本初演) 指揮:グルリットほか、1966年3月23、24日、文京公会堂

G. シャルパンティエ:歌劇「ルイーズ」(短縮版)(1935)

G. シャルパンティエ:歌劇「ルイーズ」(短縮版)(1935)

  • アーティスト: ギュスターヴ・シャルパンティエ,ウジェーヌ・ビゴ,パリ管弦楽団,ロージェル合唱団,ニノン・ヴァラン,ジョルジュ・ティル,アンドレ・ペルネ,エーメ・ルクヴルール,クリスティアーヌ・ゴーデル
  • 出版社/メーカー: Naxos Historical
  • 発売日: 2003/08/01
  • メディア: CD
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アリアだけが有名で、全曲版ディスクがない作品ですね。竹原正三さんはこのあたりからパリの人になっていったということでしょうか。