おたよりコーナー

英米の音楽論については、何か言いたい人が多いのか、あるいは、何かを語り合いたいと思う人が英米の音楽論に関心を持つということなのでしょうか。

お二方からいただいた反応をご紹介します。

その1:

@FintaPazza 松本直美
私はクックが日本でどのように翻訳されどのように読まれているのか申し訳ないが全く知らない。しかしニック自身の方法論は「紆余曲折あって、それだけでは上手くいかないということになって次に移る」などではない

Twitter

私はニコラス・クック本人の人となりを存じ上げませんし、彼本人にも(そして実は彼が書いた書物にも)今のところほとんど関心がなく、先の文章は彼の書物の邦訳に惹かれていたらしい日本の音楽学院生たちへの関心に突き動かされて書いたにすぎないのですが、

もし、『音楽・想像・文化』が「主に学生を対象とした書物」なのだとしたら、それがあのように仰々しく立派な体裁の学術書として日本で刊行されたことは、ニック様にとって、かえって誤解を招く日本デビューだったかもしれないと思うしかありません。

(マイケルを日本のファンに魅力的にプレゼンする西寺郷太クンみたいな人が、ニックにもいればよかったのに残念です。)

……と英国在住と思われる方を前にして、ご存じであるとは思われない名前を出すのは不作法ですが、マイケル・ジャクソンの魅力の語り部を標榜して、彼の死後、精力的に活動している西寺郷太というポップ・ミュージシャン兼ライターがいて、彼の仕事を見ていると、不当に軽く見られてしまっているかもしれない名前を復権するには、当世日本ではどういうやり方が有効なのか、とても示唆的だと私には思えるのです。標準語と関西(京都)言葉を巧みにチャンポンで使うトークの匙加減などを含めて。

新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書

新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書

ケンブリッジの先生の話題にマイケル・ジャクソンを持ち出すことは、弁護士のダーリンの友人知人のパーティでマドンナを話題にするようなもので、不作法に不作法を上塗りしてしまっているかもしれませんが。
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]

とりあえず、

「紆余曲折あって、それだけでは上手くいかないということになって次に移る」を「その方法論の限界を見極めたうえで新たな視点へ展開する」と言い換えればお怒りが解けることになるのでしょうか?

そうすれば、

FintaPazza 松本直美
それからニックは「音響をコンマ何秒の単位で計測したデータにもとづく演奏論」にも絡んでますがそのカルト(失礼)の中で「方法論の目新しさ」だけではない「何か」を読みとりそれを理論化できる数少ない人の一人。

であり、

FintaPazza 松本直美
「目新しさ」だけで売ろうとする若手に「それでアナタ何をやりたいの?平均でも取るの?」と突っ込める人なのです。

というニック様の魅力(出会った者を虜にしてしまうのかもしれないような)と矛盾しなさそうですので。

(「新奇」と思われているのかもしれない研究手法にコミットしつつコモン・センスを失わない英国男性大学教員の態度が、日本では「新奇な手法に耽溺する人物」の代表として面白がられているのはどうしたことか、という戸惑いを綴った文章が、他でもなく、新奇な手法に耽溺する人物を面白がる嘆かわしい文章であると判定され、英国でオペラにおける「狂乱の場」(私にとっても大変興味深く思われます)をご研究していらっしゃる松本先生のお憤りを誘発したのだとしたら、

わたくしは、このような「ニックの人物像」をめぐる日英のねじれを糺す前に、このねじれから派生したアクシデントにこそ、翻訳の不可思議とでもいうべきものを感じずにはいられませんし、わたくしは、この奇妙な捻れを狂乱することなく見つめ続けることに、自らのコモン・センスを賭けたいと思っております。

わたくしの立場で、英国男性大学教員の揺るぎないコモン・センスに対峙するとしたら何ができるか? 当面私には、そのようなことくらいしか思いつきませんので。)

世界文学とは何か?

世界文学とは何か?

  • 作者: デイヴィッド・ダムロッシュ,秋草俊一郎,奥彩子,桐山大介,小松真帆,平塚隼介,山辺弦
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2011/04/27
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 48回
  • この商品を含むブログ (23件) を見る

その2:

zmzizm ないわ 2012/01/04

はてなブックマーク - zmzizm のブックマーク - 2012年1月4日

どこのどなたか存じ上げませんが、お忙しいなか、わざわざ日本語にして3文字(ローマ字入力だとすれば6ストローク)ものコメントを頂き、心より感謝し、恐縮しております。

また、ブックマーク一覧を拝見して、id:shinimai今井晋さんが色々と興味深い日記を書いていらっしゃることを知り、zmzimz様を経由して再発見した今井さんのブログを読みふけってしまいまして、大変勉強になりました。もはやzmzimz様から話題が逸れてしまいますけれども……。

普遍論争 近代の源流としての

普遍論争 近代の源流としての

これとか、すごく興味あります。

さてそして、わたくしといたしましては、おそらくzmzizm様が「あり」とお考えであるに違いない今井さんのように冴えた論理を構築する知的体力が我が身に残っているのか、心許ないところでございますので、整合性のある論理の構築は若い皆さまにお任せして、

「こういう場合はどうなるのか。こうしたこともあるのではないか」というように、構築された論理に対して、ひょっとすると思考を活性化する「例外」としていずれお役に立つかもしれないけったいな事例を突拍子もないところから拾ってくる作業に邁進したいと思っております。

清潔な書斎に座っている忍耐力のなくなってしまった年寄りにできるのは、そうした「ゴミ拾い」程度でしょうから……。

(「ネタとしては面白い/面白くない」と通りすがりに消費されておしまいにならないように気をつけながら……。)

以上