チャイコフスキー・ラスト・コンサート

チャイコフスキー:交響曲第6番

チャイコフスキー:交響曲第6番

  • アーティスト: モスクワ放送交響楽団,チャイコフスキー,フェドセーエフ(ウラジミール)
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1991/07/21
  • メディア: CD
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私は別の演奏会へ行ったのですが、今日はシンフォニーホールでフェドセーエフとモスクワ放送響が「悲愴」他をやっているはずです。

実演は何度か聴き、熱いファンがいる指揮者らしいのですが、ちょっと必要があってフェドセーエフのことを調べてみると、70年代からこのオーケストラの指揮者なのだけれども、ちょうどソ連が解体した前後くらいがチャイコフスキーの没後100年で、ショスタコーヴィチの場合がそうだったように公式見解の裏側の色々な情報がでてきはじめたときに、そういう時代にふさわしいチャイコフスキーをやれる人物と目されるようになったような印象ですね。(ゲルギエフより「いい人」っぽいし。)

その象徴が、自筆譜を調査した上で演奏した、とされる「悲愴」。(実は先日の東京行きもサントリーホールでこれを聴くためだったのですが、今回の「悲愴」もほぼ同じ線上の解釈と思いました。)

さらに、関連してこのCDを取り寄せたら、

チャイコフスキー・ラスト・コンサート「悲愴」オリジナル盤

チャイコフスキー・ラスト・コンサート「悲愴」オリジナル盤

  • アーティスト: ニコラーエワ(タチアナ),チャイコフスキー,モーツァルト,スヴィリドフ,フェドセーエフ(ウラジミール),モスクワ放送交響楽団
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1993/11/21
  • メディア: CD
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アマゾンに在庫はないけれどビクターのオンラインショップなどで買えるようです。アンコール「スペインの踊り」のタンバリンおじさんは既にこの頃から拍手喝采(笑)。

ニコラーエワのピアノ協奏曲が素晴らしい。1993年6月、亡くなる半年前のシンフォニーホールでの演奏で、技術的には喘ぐような感じになるところはあるわけですが、でもこの曲は、若い人による立て板に水の演奏ではないほうがエレガントになるみたいですね。沼地へ沈みゆくロマノフ王朝みたいな感じで魅了されました。

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バレエのことを調べはじめたら(http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20121008/p1)、俄然ロシア/ソ連のことを考える新しい入口がみつかったような気がしておりまして、

叢書 20世紀の芸術と文学 ムラヴィンスキー 高貴なる指揮者 (叢書:20世紀の芸術と文学)

叢書 20世紀の芸術と文学 ムラヴィンスキー 高貴なる指揮者 (叢書:20世紀の芸術と文学)

ムラヴィンスキーは、1990年代に「帝政ロシア調」が復活するまえの「鋼鉄のソ連」様式の最高峰のような人ですが、どうやら貴族階級出身で、ロシア革命により没落したけれども国外へ出ることもできず、ペテルブルクの劇場の裏方へ潜り込んで生き延びた人らしい。

本書は淡々と経歴を記述するのみですが、あの厳格な規律は、実は大衆嫌いの貴族趣味ではなかったか、という観測があるそうで……、ソ連/ロシア問題が一筋縄でいかないのはショスタコーヴィチだけではないようですね。(というより、ショスタコーヴィチばかりを殉教者扱いすることで見えなくなる機微があるのかもしれません。「全体主義」の論じ直しは、当然、ソ連の論じ直しと連動していなければおかしいわけで。)

劇場通り (クラシックス・オン・ダンス)

劇場通り (クラシックス・オン・ダンス)

あとディアギレフのバレエ・リュスというと、ニジンスキー、ストラヴィンスキー、バクスト、レーリヒなどキャラの濃い男たちがひしめいていますが、私は数々の初期の舞台でニジンスキーと共演して、ロシア革命後に英国へ亡命したカルサヴィナが一番気になります。あの狂気の集団のなかで唯一まともだった人。ステキじゃないですか。