下野竜也と井上道義の指揮権が停止した週末

昨夜は大阪フィル定期でコリリアーノ「ハーメルンの笛吹き男」。

コンマスが弓で拍子を取る場面はあるし、中学生の笛吹き隊はソリストのリードでマイペースに行進するし……。

「指揮者はオーケストラを統べるカリスマである」とか言っちゃって、オトナたちが壮大な音楽を気持ち良く鳴らしていると、鼓笛隊のほうが面白いから、子供たちは寄りつかなくなっちゃうよ、という作品ですね。

(そういえばバーンスタインは、若き日のコリリアーノが作曲したジャズに目覚める白人少年の物語を「ヤング・ピープルズ・コンサート」のジャズの回でやってましたね。子供の目線でオーケストラ(=ニューヨーク・フィルのコンマスだったパパの職場)を「外」から眺める発想がこの人にはあるみたい。)

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そして今日は、兵庫芸文オケのプロコフィエフ特集。コパチンスカヤ登場。

最後の交響曲7番も、このオーケストラがこんなにまとまるのか、と驚く面白い演奏でしたが、コンチェルト(2番)は別世界。ヴィオラやチェロと一緒に弾くところになると指揮者が後ろへよけちゃって、彼女がオーケストラの方を向いて弾き方のお手本を示す、みたいなことになっておりました。ほぼ、彼女がリーダーとなってまとめたような演奏ですね。

ありえないくらい音量を落とすところは、彼女が率先して誰よりも小さい音で弾いて、「大きい音を出したら負けヨ」の福笑いゲームへ一同を巻き込む感じ。誰に指示されたわけでもなく、オケの皆さんも同じ音楽家同士の意地があるんで、絶対にアイツより小さい音を出してやる、とわけのわからない競争がはじまって、素晴らしい演奏になりました。

そしてシーンと静まりかえっているときに、プッと吹き出すみたいに緊張を破るのは言い出しっぺのコパチンスカヤでありまして、身を翻して、みんなを置き去りにして次のパッセージで駆け出したりするのですから、結局、みんな彼女にいいように操られているわけですね。

いちいち指揮者へお伺いを立てない直接取引だから、話が早いわけです。

よろしいんじゃないでしょうか。井上道義も明らかに面白がっているし。というか、この人は何か面白そうなことを見つけると逃さないですよねえ。自分が何をすればいいか、本能的にわかるみたい。頭が良い。

(明日は、ザ・フェニックスホールの「イーノック・アーデン」。ピアノの小坂圭太は、岡田暁生や大久保賢が「ネ申」と崇めている人ですから、その筋の人がワラワラと集まって、三原剛の朗読そっちのけでピアノの十方へあまねく降り注ぐ久遠の響きに礼拝する妙なコンサートになるのでしょう。

これはもう狂信者の宗教みたいなもので、家族・知り合いが止めろと言っても、入信しちゃった人は財産をすべて教祖様へ寄進したりするのが世の常ですから、しょうがないんでしょうねえ。

明日か明後日の大久保ブログは、またエレクトするのであろうと思うと、今から既に憂鬱なクラシック音楽真理教。鑑賞するぞ、鑑賞するぞ、鑑賞するぞ、リヒャルト・シュトラウスで空中浮遊だ!)