剃髪と皿回し(小沢昭一『新・日本の放浪芸』)

親鸞聖人は非僧非俗。妻帯しており、浄土真宗の僧侶は出家した坊主ではないので、お葬式で故人が仏様になるときにも剃髪の儀式はありません。(それに当初間違えてましたが、受戒するわけではないので、いただいた名前は戒名ではなく法名と呼ぶようです。)

浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)

浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)

僧侶(坊主)がお葬式をやる、というのを日本で広めたのは曹洞宗であるらしい。あちらさんも、案外ストイックな「坐禅」だけではないんですね。

だから、今話題の「坊主になった」女子アイドルさんは別の宗派か異教の信仰を前提しているんだろうなあと思うわけですが(なにやら周囲に生者たちの煩悩が渦巻いておるようだし……、「剃髪の文化史」を誰か新書にまとめてみたら?)、ここでは、黒々とした髪を七三に分けて、神と旅する大夫さんのお話です。

小沢昭一の「新日本の放浪芸」?訪ねて韓国・インドまで? [DVD]

小沢昭一の「新日本の放浪芸」?訪ねて韓国・インドまで? [DVD]

      • -

「大栗裕の出世作「大阪俗謡による幻想曲」に出てくる大阪の獅子舞は伊勢大神楽の系統であるらしく、この曲で使われているのと同じ系統の篠笛の音曲を伊勢大神楽講社の大夫さんが伝承しているらしい。」

神と旅する太夫さん―国指定重要無形民俗文化財「伊勢大神楽」

神と旅する太夫さん―国指定重要無形民俗文化財「伊勢大神楽」

「俗謡」のことを調べるなかで、そうした事情がわかって、伊勢大神楽の資料を集めて行き当たったのが、この小沢昭一のDVDに収録されている映像でした。(正確には、日本の藝能のアンソロジーに小沢昭一チームによる映像がいくつか再録されているのを見ました。今回改めて確認すると、確かに同一の映像です。)

皿回しの放下藝のバックで、大阪の獅子舞囃子と同じ節が一瞬聞こえます(伊勢大神楽では、この節を道中囃子もしくは馬鹿囃子と呼ぶらしい)。

http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/article/ohguri-fantasia-osaka2.html

恐山の苛酷な自然とイタコの口寄せに取材した大栗裕晩年の吹奏楽曲「巫女の詠えるうた」のことを調べたときにも、小沢昭一がイタコさんにご自身のご先祖を口寄せしてもらっている映像を参考にさせてもらいました。

子供の頃に見たテレビのなかの小沢昭一は、ハモニカを吹く謎のおじさんでしたが、この歳になって、間接的に色々お世話になったことでございます。

日本の放浪芸 オリジナル版 (岩波現代文庫)

日本の放浪芸 オリジナル版 (岩波現代文庫)

今更わたくしが説明するまでもございませんが、「日本の放浪芸」は、各地を訪ね歩いて集めた録音をまとめたLPが出て話題になり、改めて映像を収録したのが「新・日本の放浪芸」。

ご本人は、「早稲田で芝居にかぶれた新劇青年であって、落研にいたけれども藝能についてはシロウトである」と言っていて、絶妙のポジションですね。

私は河原乞食・考 (岩波現代文庫)

私は河原乞食・考 (岩波現代文庫)