昨日4月26日のことは敢えて雑談として……

[4/28 途中に、雅亮会と淀工が国際フェスに参加していない件を追記。]

あちこちで昨夜の大植英次・大阪フィル@大阪国際フェスティバル最終日の話題を見かけます。あれだけの熱演(最後の盛り上がりもですが、第2楽章が10年前よりさらに/はるかに豊かな音楽でした)なら、当然かと思いますが、

日経夕刊に寄稿しております音楽評は、3月に藤岡幸夫(関西フィル)、4月に外山雄三(大阪響)と、月一本のペースで「関西でもおなじみの日本人指揮者を真剣に聴いてみるシリーズ」みたいな感じになっております。偶然ではありますが、5月、6月も続きそうです。

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ところで、

改めて調べてみますと、4月のフェスティバルホール公演のうち、「第51回大阪国際フェスティバル」名義なのはフェニーチェ歌劇場、マゼール&ミュンヘン、佐渡&BBC、大植&大阪フィルの4団体だけで、熊川哲也や万作・萬斎祝祭大狂言会(そして、さだまさし)は違うんですね。

近代ホールで能楽、という朝日会館以来の伝統、「フェスティバル能」はもうやらないんでしょうか。「近代ホールの能楽公演」の歴史がひとつの節目を迎えたのだとしたら、改めて歴史をまとめる仕事をこのタイミングでやってもよさそうですね。そういうことに関心のある方は、能をご研究の方のなかにいらっしゃるのではないでしょうか?

あと、フェニーチェと大フィルの両方に行ってわかったのですが、今回(から?)、国際フェスティバルのパンフレットは統一仕様ではないみたい。(以前は全公演のパンフレットを入れる専用のケースまであったりした。)

ホールがリニューアルしただけでなく、ソフト面でも色々変わるようで、大阪国際フェスティバルの第一期50年は、こうして「歴史」になっていくんだなあ、と感じます。

[追記:忘れてはいけない、国際フェス第1期にあって第2期にないのがもうひとつ。オープニングの雅楽(四天王寺雅亮会)とエンディングのファンファーレ(淀工)! おそらく、フェスティバルと銘打ってはいるけれど、大阪に滞在して4公演を通して楽しむ、という形は、もう建て前としても一切想定していないのでしょう……。これが一番の変化かもしれません。]

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大植・大阪フィルの「復活」(←字数が少なくて簡単に打てるのでこの表記を使います、実用第一)は、パンフレットに佐藤千晴さんが朝日新聞記者として書いているように、2003年5月19、20日にシンフォニーホールでやった曲に、10年後の今再び戻ってきた、ということですし、

(あの演奏会のときは、「(佐藤さんにスカウトされて)4月から朝日大阪版に書くことになった人」ということで、東京の吉田純子記者とか、全国版に評を書くことになっていた伊東信宏先生とかと並んで客席で聴いていた……)

「復活」という曲は「第九」(2008年12月29、30日大植・大阪フィルの旧フェス最終公演の曲だった)をマーラーが先例として意識したに違いないカンタータ交響曲ですし、

フェスティバルホールが工事をしている期間中に、このコンビは兵庫芸文でマーラーの4番(2011年7月28日)→3番(2012年5月10日)をやって、今回が2番(2013年4月26日)というように、「角笛交響曲」で(秘かに?)カウントダウンをしていたわけですが、

(今回のパンブレットの表紙中央に「Vol.3」とあるのは、2011年の4番=Vol.1、2012年の3番=Vol.2を受けているのだと思います、少なくとも大フィルさん側はそのつながりを忘れてないぞ、という意志をこの数字に感じます)

でも、今回、実際の「その日」を迎えてみると、いかにも大植さんらしい細やかな「綾」を振り切ってしまうような感じに、グワっと殻を破るような盛り上がり方をしたのが印象的でした。

「覚醒する」とか「再び生まれる」とか、というのは、予め見通すことができる地点へ順当にたどり着くのではなく、あっと驚く飛躍(実際に到来するまで誰も予期できないような)があるものなのかもしれないですね。

(もう随分前に朝比奈さんが旧フェスでやった「復活」をFMラジオで聴いたこととか、小澤征爾がボストンでジェシー・ノーマンなんかとこの曲をやっているのを追いかけたドキュメンタリーのことなどまで、昨夜は不意に思い出したりしてしまいました……。)

こうやって、記憶を更新しながら人は先へ進んでいくものなのかなあ、と。

記念碑的な交響曲で新しいホールにモニュメントを建てたということですね。良い経験をさせていただきました。

(どうやら、4月26日の関西のテレビは大阪駅の北側の旧貨物駅の敷地に巨大なビルがオープンしたことを大々的に報じていたようですが、そういうことに文字通り「背を向けて」、大阪駅の南の塔に集まった人が少なくとも2,700人いたというのは、大事なことのような気がします。わたくしたちは、大阪キタに次から次へと巨大建築が新装オープンする経済という舞台上での「21世紀版大東亜戦争」(なんちゃらノミクスでしたっけ)の真っ最中に文化をやってるんですねえ。^^;; 中之島のフェスティバルタワーだって朝日新聞社の最新鋭基地みたいなものなのでしょうし……。こんなところで音楽をやっていたら戦火に巻き込まれそうになるのは自業自得かもしれませんが、なんとか生き延びたいものです(笑)。)

容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー)

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