ピーター・グライムズ

今日と明後日のザ・カレッジオペラハウスの公演については立場上コメントできないのですが(芸術祭の審査員なので)、1969年にブリテンが指揮してピアーズが歌っているBBCのテレビ番組の映像も残っているんですよね。

Peter Grimes [DVD] [Import]

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BBCのブリテン・オペラは、1950年代に「ビリー・バッド」や「ねじの回転」の舞台初演を演出したバージル・コールマンの企画であるらしく、プロデューサーはデッカからBBCに移籍したジョン・カルショーだったみたい。さらにディレクターはブライアン・ラージで、このドラマのややこしい人物関係をばっちり映像で捉えていますし、最強のスタッフが揃っている感じですね。

こんな完璧な映像が残っていたら、あとで演る人間が困るとも言えるし、逆に「決定版」はいつでも見られる形で既にあるのだから、思い切ったことができるとも言えるのでしょうか。ブリテンという人がまた、ストラヴィンスキーみたいな奇怪な人と違って、ごく普通の意味でものすごく有能な指揮者ですし、とにかくこれは、観るとびっくりしますね。こんなに明快でいいのか、と唖然とする。

昔のテレビの煌々と明るい照明の下、視野角の狭い場所にお芝居が限定されているのに慣れない今時の方は戸惑うかもしれませんが、そういう昔のテレビ映像の懐かしさと相まって、劇場とは大違いな制約のなかにぴったり収まるコンパクトな感じが、むしろブリテンの「らしさ」じゃないかと私には思える。

「ピーター・グライムズ」を初演したときは、まだ、そこまで考えが固まっていなかったかもしれないけれど、60年代のブリテンは室内オペラ指向がはっきりしていたはずで、その意味でも、テレビ・スタジオでのオペラ制作はこの人に合っていたんじゃないか、と。(これだけ有名人の揃った番組だと、実際の現場がどうだったか色々証言が残っていそうなので、映像を観た印象だけで即断してはいけないかもしれませんが。)

Britten: Pears Collection [DVD] [Import]

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Peter GrimesのDVDは既に持っているのだけれど、これはBilly Baddも観ておかねばと注文してしまった……。

演出のコールマンは、ブリテン生誕100年の今年3月に亡くなったみたい。

http://www.roh.org.uk/news/opera-director-basil-coleman-dies

↑そのものズバリのわかりやすいというか、これでいいのか、と思うURLですが……。