最近こんな作文をした

ここで扱っているのはオペラの話だけれども、日本歌曲でも似たような視野狭窄がありはしないか。「美しい日本語」もいいけれども……。ドイツ・リートもフランス歌曲もイタリア歌曲も、「正しい言葉遣い」とか、そんなんで作曲されてはいないと思うけど。

日本におけるオペラ公演史は昭和音楽大学オペラ研究所が(同研究所編『日本のオペラ史』水曜社、2011年)、そして関西におけるオペラ公演史は大阪音楽大学音楽文化研究所(現音楽博物館)が既に整理しており(「関西におけるオペラ公演史」『西日本音楽文化資料』1976年、pp.1-98)、日本のオペラに関する研究の資料的な基礎は既に整備されているが、個々の作品・公演をめぐる議論は音楽面に偏り、長木誠司の近著『戦後の音楽』(作品社、2010年)の「オペラ」の章がそうであるように、作曲の技法と様式の評価(端的に言えば、前衛音楽運動の枠内での発想の同時代性もしくは新しさの有無)、歌唱における日本語の扱い(朗唱法がオペラとして、日本語として違和感がないか)などが主な論点になっている。

このように限定された視角からでは、演技・演出に特色のある作品・公演の意義を十分に把握できないと考え、この研究では、一連の公演を、より包括的に扱う方策を探る。