軍事のメタファー

巧妙に「オレ」のコミットメントが消された戦争文学のような感じがする。

今50代や40代の社会の中核にいる人々は、冷戦の最中に育ち「次に戦争が起これば全面核戦争で世界は破滅する」といった戦争観を拭い難く植え付けられている。「オリンピック中継のような戦争」は彼ら(オレら)にとっては「戦争」ではなく、会議と稟議と決裁の延長線上にある日常業務となるだろう

増田聡 on Twitter: "今50代や40代の社会の中核にいる人々は、冷戦の最中に育ち「次に戦争が起これば全面核戦争で世界は破滅する」といった戦争観を拭い難く植え付けられている。「オリンピック中継のような戦争」は彼ら(オレら)にとっては「戦争」ではなく、会議と稟議と決裁の延長線上にある日常業務となるだろう"

ん? 冷戦体制が崩れて、大学院が「博士を作る場所」に急速に再編されたときに、ああ、戦争だなあ、と思って、以来その感じのまま今日に至っているのだけれども、何か?

だって、「教授」とかって、前線で活躍することが期待される部隊を任された将校ですやん。軍功に応じて国から勲章を賜るし。で、そういう将校を束ねる学会の長は、だから「元帥」なのでしょう。そういう人が、退役してから民間で、昔、陸軍師団があったあたりで「作戦」を立案して、数年がかりの「合同大演習」を展開中だったりしてますし。

企業戦士(←「戦士」!)さんは、日々あっちこっちでタイトな交渉をしてらっしゃるんで、おれたちがやってることも戦争の一種だよなあ、と、むしろ普通にそう思うんじゃないでしょうか。自治体の革新首長さんが「民間並み」とよく言っていたのも、ここが戦場であることを自覚せよ、の意味だろうと思うし。

もし、「戦争です」と行政の長が宣言することがあるとしたら、それは、既に前から将校なのだけれどもそのことを自覚していないうっかりさんも、これからは将校としてちゃんとやってね、くらいの意味しかないと思う。

押さえるところは既に押さえてあるんで、まあ、「署名運動」くらいはやるかもしらんが、反乱将校が武装蜂起するほどの力はあるまい、と見積もられてるんじゃないのかな。仮にそういうのをやっても、周りがついてこないから、数日で投降して終わりだろう、とか。

そのうち、「大学は機密を取り扱う軍事機関であり、警察の立ち入りはまかりならん」という論法で、将校の皆さんが渇望している「学問の自治」が実現するかもしれないし。

(現に軍事独裁や社会主義の国家は、しばしば、絶大な特権を得て業績を上げる学者(と芸術家)を生み出す。上手に立ち回る人にとっては、何ら悪い話ではないわけだ。)

スペイン音楽のたのしみ: 気質、風土、歴史が織り成す多彩な世界への“誘い

スペイン音楽のたのしみ: 気質、風土、歴史が織り成す多彩な世界への“誘い" (オルフェ・ライブラリー)

フランス音楽好きはしばしばスペインに憧れるけれど、闘牛とフラメンコとか「民謡の宝庫スペイン」は、カストロ政権のプロパガンダ、外貨獲得の観光政策の意味合いが間違いなくあったはずで、事実スペインの音楽・文化については、「先方が見せたいもの」の先へ進むのが難しそうな雰囲気が濃厚にただよっている(いた)。ジプシー差別の問題は、それもあって、かなり深刻に入りくんでいるように見える。中国共産党が少数民族の芸能の紹介に熱心なのと何が違っていたのか、という話ですよ。その後、体制が変わりましたから、(中南米・ヒスパニック問題との絡みもあって)北米の研究者を中心に、今世紀に入ってスペイン音楽研究は着実に進みつつあるようにも見えますが。

「国民」が舐められているのではなく、幹部クラスの中間職は全員、言うことを聞く「部下」だと見られているんだと思う。

そして、「自分が舐められている」という否定しがたい感触を、「国民すべてが舐められている」という風に拡大解釈すると、事態を見誤ると思う。そういうの、インテリにはありがちだが、ここで判断を間違うと、それこそ「みんな」が困るかもしれないんで、よく考えていただきたい。

日本沈没 [東宝DVDシネマファンクラブ]

日本沈没 [東宝DVDシネマファンクラブ]

[リンクの貼り間違い、直しました。リメイク版はあまり興味が……。]
震災&原発事故直後に話題になっていた頃は、過去にすがってどうする、と思っていたのだけれど、今日やっと観た。48年生きてきて初見でございます。基本的に「全面核戦争で世界は破滅」とか「地球存亡の危機」とか、破滅への願望/恐怖の扇動にはほとんど反応しないゴキブリのようなわたくしですが、観たら、意外にも、渋いオッサンたちの物語だった。一時期たくさん作られた「地球最後の日」系の映画、小惑星と一緒に爆発して地球を救う石油堀りのブルース・ウィルスのスペクタクルとはちょっと力点が違う感じですね。狙った部分と結果的にそうなった部分が混ざっていそうではありますが。
仁義なき日本沈没―東宝VS.東映の戦後サバイバル (新潮新書)

仁義なき日本沈没―東宝VS.東映の戦後サバイバル (新潮新書)

で、48歳になって4日目に「日本沈没」を観たのは、この本があまりにも面白くて、この本を楽しむためには観ておいたほうがいいかな、と思ったのです。会社の思惑・プロデューサーの采配・監督やスターの動き・撮影所のスタッフたち……映画や芝居の興行の話は、本気で調べて書くとこういう戦国絵巻にするしかないところがあって、面白く読み進めると同時に、こういうのを面白がるようになったらオッサン確定だなあ、とは思いますが……。

「仁義なき……」は、いまだにまったく観たことがなく、どうしたものか、思案中です。

「蒲田行進曲」とか、子供のころテレビで何度も放映されて、日本の映画はドロドロして汗と涙と鼻水がグチャグチャで、女優さんがすぐ裸になって(「清純派」の「体当たりの演技」……)、なんだかなあ(覗き見たいオトコ心を強く刺激されはするけれど)、と思っていたその一番濃ゆいところですよねえ。

でも、春日太一のガイドがあると、観れてしまいそうな気になってくるから不思議。