「春の祭典」の祭典からベートーヴェンへ

ラヴェルとシュトラウスを巧妙にパクった「ローマの噴水」というのがあって、どうやらこれを書いたのは、バロック音楽オタクで作曲志望のイタリアのヴァイオリン弾きらしい。そう聞きつけて、興行師の勘でこれはイケると判断したのがバレエ・リュスのディアギレフ。かくして、「風変わりな店」が「三角帽子」と同じ年にロンドン、アルハンブラ劇場で初演された。

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20121114/p1

2013年は「“春の祭典”初演100年」だったのだそうで、ついこの間まで、「20世紀の代表曲はこれで決まり」「百年経った今も色あせないその衝撃」というような惹句をあちこちで目にしましたが、「プロジェクト春の祭典」を背後で糸引いていたのも、もちろん、ディアギレフ。

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バレエ・リュスが、1929年のディアギレフの死でそのまま解散しちゃった、というのも、うたかたの夢、な感じで、よくできたお話だと思う。

が、それにしてもですよ。

2014年になったと思ったら、もう「「春の祭典」の祭典」はどこへやら。

偽ベートーヴェンの出現で、前衛作曲家の極北としてのシェーンベルクとか、モーツァルトはこうだったとか、一連の話題の周辺には「ドイツ系」の音楽家の名前ばかりが登場する。

東京交響楽団がサムラゴーチ(←カタカナにするとバルカン半島の小国から出てきた人のようにも見える)してる間にあれこれ準備を整えて、「春の祭典」でワールドツアーに出るらしい東フィルのことも忘れないでいただきたいかもしれない。(大植英次との共演は、昨年「らららクラシック」でも色々みた。)

ひょっとするとどこかに裂け目があって、何か面白いものが出てくるか、と眺めておりましたが、「ニッポンのゲンダイオンガク」は、この半世紀で鍛えられて、ちょっとやりすぎではないかと思うくらいにガードが堅そうで……(西洋音楽とその分派(ポピュラー音楽、現代音楽)を川の流れにたとえたい人がいるようだが、だとしたら、彼らはもう、水利権をめぐる折衝でつながる往年の農村共同体のようにご近所づきあいするのを止めて、井戸を掘って地下水を直接くみ上げて生活しているように見える、それだけの生存力もあるみたい)、

もう彼らのことはほっといて、「堅きとりで」の外で遊ぶ分には、シンフォニーもまだ捨てたものではなさそうだけれど、でも、好むと好まざるとにかかわらず、「ドイツ押し」で行くときには、やっぱりドカンと一発、迷っちゃだめ、疑っちゃだめ、だましダマされしながらも、花も嵐も艱難辛苦を乗り越えて、になるんだな、ということか。ビッグ・ビジネスがそこにあった。

誰かの仕掛けなのかなあ、それとも、もう動き出しちゃってるから、小手先ではどうにもならず、こういうのは「黙って事変に処す」のか。時代は百田尚樹のものなのか。

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そしてこの流れで、伊福部昭生誕100年なんですねえ。