引用

[……]就任披露に20世紀の音楽をやるのは井上らしい挑発。ただし演奏は、決して冷たくない。

大きな空間を埋める大音響も、語り口がおおらかで、いわば手作りの感触がある。中間の葬送音楽の壮大なクライマックスは、まさに血の通った人間の叫び。音楽家は機械の部品ではないと、全力で訴えるかのようだ。

井上は、管楽器の愛らしいメロディーに大げさに反応して客席をなごませ、ひとつの音型を爆音で繰り返す曲中最大の見せ場では、演奏を楽員に任せて、指揮台に立ち尽くす。重火器を大量投入する物騒な音楽に、生身の人間が素手で立ち向かう。幅広く共感を得るドラマを演出したのではないだろうか。

(音楽評論家 白石知雄)[日本経済新聞大阪版夕刊、2014年4月24日]

ドラマはまだこれから!

http://www.michiyoshi-inoue.com/2014/05/post_18.html