バルトークの功績

「東洋のバルトーク」こと大栗裕は、歌劇も管弦楽も書いたけれど後世に残ったのは吹奏楽曲(主に1970年代の)だった。

本家ハンガリーのバルトークの最大の遺産というか功績は、今も室内楽コンクールの課題曲として誰も避けて通ることのできない弦楽四重奏曲を残したことかもしれないね。

弦楽四重奏は、西洋音楽の奥の院という感じにただでさえハイコンテクストなところにアヴァンギャルドの文脈や中央ヨーロッパのフォークロアの文脈を加えて前人未到にコンテクストが複雑で、なおかつ、そんな風にいろいろなものが混ざった状態をありえないくらいに濾過・純化しているようにも聞こえる。何をどうやったらこういう風にできるのか、わからんですよね。

どう弾いても「正解」がない感じの難問だから、コンクールには最適なんでしょうね。

これがどういう音楽なのか。コンテクストの大半を見据えて、なおかつ、楽曲としてのつくりを隅々まで説明できる人って、ハンガリーあたりのバルトーク研究家が数人か十数人いるだけなんじゃないかしら。

「オレは見抜いた、見切ったぞ、バルトーク破れたり」と勝手に宣言する人がたくさんいそうだけど。というか、独善であってもそんな風に思わないと人前で弾けないだろうけど……。面倒くさい音楽ですね。