渡航スケジュールの情報価値

どうやら、ものすごくたくさんの道具立てを総動員してかからなければならない大変なテーマに自分が足を踏み入れつつあるらしいことがわかってきて、どうしたものかと思っているのですが(しかもそれだけ大げさに色々やった着地点が「もういいかげん、キッチュの居直りを肯定するってことで、皆さんここは手を打ちましょうよ!」みたいな話だったりするのは費用対効果の問題としてどうなのか、そもそも、そんな話をヒトはまじめに取り合ってくれるものなのか……)。

とりあえず小さな余談。

朝比奈隆の海外での指揮活動を報じる関西音楽新聞の記事をみると、タイミング的に情報開示できるときは、コンサートのスケジュールと一緒に朝比奈がいつ日本を発って、いつ帰国するのか、何月何日何時羽田発の何々便みたいなことまで記事のなかに書いてある。

たぶん、海外旅行が珍しくて、離発着便のタラップの周りを報道陣が取り囲む一大イベントのイメージですね。ビートルズの来日騒動のニュース映像とか、そんな感じ。

実際はどうだったんでしょう。

1956年にベルリン・フィルを指揮しに行ったときには羽田からの出入国で、出発前に東京で壮行会を開いて、山田耕筰と一緒に写った写真が音楽之友社に出ていますが、帰国後は特急で大阪駅に着いたところで記者会見が開かれたようです。空港で関係者の見送り・出迎えはあった(かも)しれませんが、関西の報道陣が羽田に殺到したわけではなさそうですね。

それ以後は、おそらくさらにこじんまりした出入国だっただろうと思うのですが、それでもこうして渡航スケジュールを出すのは、紙面で「国際派指揮者」を晴れやかに演出する関西音楽新聞(事実上は野口幸助さん)の意向だったのか、それとも、当時の渡航報道は新聞などでもこういうものだったのでしょうか?

ちょっと気になる。