- 作者: カールスネソン,Carl Suneson,吉水千鶴子
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2001/07
- メディア: 単行本
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本が届く。
ドイツ・ロマン主義が古代インドの哲学・宗教・神話を「発見」していくうねりがあって、それは、その先に印欧語族だのアーリア人だのという話が沸いてきたり、ブラヴァツキー女史の神智学も秘境チベットへの憧れと絡まっているらしかったり、業が深くてハタ迷惑な西洋人の手前勝手な熱狂なわけですが、
- 作者: フレデリック・ルノワール,今枝由郎,富樫瓔子
- 出版社/メーカー: トランスビュー
- 発売日: 2010/09/02
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スネソン(30代で視力を失い53歳で亡くなったらしい)の本はワーグナーの手紙やコジマの日記が色々引用されていて、ワーグナーが、そういうインド・ブーム、仏教ブームのあれこれをたっぷり吸い込んで台本を書いていたらしいことがわかる。
インド学者の目からみれば、教団に動物の殺生はダメという戒律があったり、第2幕は森でブッダが悪魔に誘惑される話そのものじゃん、とか、パルジファルはあっちこっちがインドっぽい、ということになるらしい。
ということは、本気でワーグナーと仏教のテーマで演出するなら、もっとがっつり調べて、徹底的にやってくれたらよかったのに、ということになりそうですね。
クプファーが3人の僧侶をフィンランドで既に出していることを考え合わせると、今回、日本でやるときに「仏教色がテーマだ」と言ったのは、ややリップサービスなところがあったのかもしれない。
そこまで「仏教のみ」にフォーカスして舞台を作っているわけじゃなく、七色の多義性のなかのひとつの色として、ちゃんと仏教が入ってますよ、くらいの感じかもしれませんね。
ワーグナー自身は、ブッダのことを「インドの高貴な王子」と呼んだりする王族好きでもあるみたいなので、彼の仏教観が「三人の僧侶」というイメージだけで片付くとは思えない。
本気で「ワーグナーとインド、ワーグナーと仏教」という話をはじめると、例によって19世紀の西洋人が彼らの都合でいろんな幻想を繰り広げているので、ズブズブと深みにハマりそうです。
私は当面、19世紀ヨーロッパのニヒリズムに仏教が果たした役割を細かく追いかける元気はない。
- 作者: ロジェ=ポルドロワ,島田裕巳,田桐正彦
- 出版社/メーカー: トランスビュー
- 発売日: 2002/05/05
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余談ですが、こういうのを読んでいると、日本人の「西洋化」は昭和の終わりから平成のはじめくらいがピークで、21世紀の現在は、もはや当時ほどには、なりきれていないかもしれないな、という気がしてきました。
昭和のインテリだったら、西洋人のマネをして、本気で仏教を「虚無の信仰」と思いなし、なんとかそこから脱却したいとあがく、あるいはそこに活路を見出す、というようなことがあったような気がします。そんな風に「日本のことを西洋人の目で語る日本人」みたいのが訴求力を失いつつあるのは、年寄りには寂しいことかもしれないけれど、悪いことばかりではないかもしれない。
西洋化と近代化は、重ねながらここまで来たけど、さすがにそろそろ分けて考えたほうがよさそうで、西洋化に邁進しないことが野蛮人への転落だ、というわけでは、もちろん、ない。
でも、だからよけいに、クプファーに3人の坊さんを見せられると困っちゃうわけですよね。
[記事のタイトルは、スネソン先生が、ストックホルム大学で教えているのだけれど資料探しでウプサラ大学の世話にもなったようで、謝辞にウプサラという地名が出てきて、ちょっと面白かったので使ってみました。]