西洋の5度、東洋の4度??

柴田南雄著作集 第1巻

柴田南雄著作集 第1巻

岡田暁生は、最近京大教授にふさわしい「文体」を獲得したように思われ、ひっかかりなく読める文章を書くようになったし、昆虫学者で一本書ける、というアイデアは、いかにも、この人らしいとは思うけれど、柴田南雄の「西洋は5度、東洋は4度」という話はあやしい。オルガヌムは4度が基本で、3度を重ねる5度の枠を重視するのはかなり新しい和声論ではないだろうか。倍音に耳を澄ませる「自然としての音楽」は19世紀だし……。

むしろこの話は、博物学=自然史 Natural history (地学・生物学)と自然哲学(物理・化学)を対比するようなヨーロッパの近世・近代の知の枠組みに柴田南雄の思考法が固着していた、その可能性と限界を彼の著作が露呈している、ということだと思う。(バルトークもそういうところがあった人みたいなので、柴田がバルトークを好んだ背景を改めて確認できた意義はありそうだが。)

[でもそれは、「弟分」の伊東信宏にバルトークを研究させて、自分はパパの多大な影響で昆虫採集が趣味である人が同じような体質の「学者の家」の柴田南雄に逢着した、ということで、岡田暁生は狭い場所から一歩も動かない人であるということ。もう居直った、ということでもある。]