どうやら歯止めはどこにもないらしい(笑)

まあ結局、音楽というのはその場で消えてしまう芸能なので、強引にこうだ、と言い張る人がいたら、もうほっとかないと仕方がない、言いたい奴には勝手に言わせとけ、かかわりあいにならないようにしよう、と対応するしかなくなるというのがひとつ。

もうひとつは、今の日本のように「中央」と「地方」という枠組みが諸事情で機能してしまっていると、「地方」のひとたちのなかには、「中央で私たちの名前を出してくれたら、それだけで嬉しい、ありがたい」とひとまずいわなきゃ仕方がない状況になってしまう人が出てくるということ。

このふたつを組み合わせると、「オレは○○というところへいって、××を聴いてきた。そりゃもうすごいものだった。もう終わっちゃったけどね」と言い張られてしまったときに、ほんまかいな、と思っても確かめようがないし、当面誰かが迷惑するわけじゃないから、じゃあ、そういうことにしとこうか、となってしまうわけですわ。

だから、意図的にウソツキ商売をしようと思ったら、ネッシーやツチノコみたいなものが全国津々浦々に存在するかのような言説を成立させることができちゃうし、「うちにも一匹いるから、是非見に来て下さい」と、その人のところへオファーが殺到することにもなりかねない。UFOや超常現象と構造は一緒です。

でも、やり続けているとどこかでツジツマが合わなくなる。

他所様を巻き込んではいけないとは思うけれど、しょうがないから書きますけれど、

例えば東条さんは、前から、山形響はすごいと言い続けてますよね。(他にもそういう風に言う人がいないわけではない。)

でも、CD聴いたら、ほんとにそんなにすごいか?と思うわけじゃないですか。申し訳ないけれど。

そしてこれとは別に、飯森範親とセンチュリーのことも随分応援している。ブラームスはさすがに庇いきれなかったようだが、マーラーを振らせたら飯森範親はさすが、であるらしい。

で、先頃、いずみホールでノリチカはセンチュリーで古典派をやって、その直後に、同じホールで山形響を指揮したわけです。

同じホール、同じ指揮者、ほぼ同じ時代の音楽です。

そうしたら、オーケストラの実力の差は、山形には申し訳ないけれど歴然としているわけですよ。そしてあのときの演奏が遺憾なく力を発揮したものなのだとしたら、身びいきと言われるかもしれないけれど、大阪響や関西フィルのほうが総合力は上かもしれない。

アウェイで慣れないホールでの演奏だったから、一回だけでそういう風に決めつけてはいけないとは思いますが、あの演奏を聴いて、本当に申し訳ないけれど、「大阪のオーケストラって、もしかしたら、軒並み相当レヴェルが高かったりするんじゃないの」と逆に思ったです。

いや、そういう比較・ランク付けをしたいわけではないんです。

でも、いくつものオーケストラを聴いたら、おのずと力の差がわかってしまうことってあるじゃないですか。そして感想を言葉にするときは、それをわかったうえで、でも、それぞれのオーケストラの目指すものとか、置かれている立場とかは様々だから、一律の基準でそんなことを簡単に言えるものじゃない。そうして物の言い方が変わって来るわけですよね。

しかしどうやら、東条さんは、そんな風に繊細周到にあれこれ思い悩んではいないように見える。たぶん、そもそも、センチュリーと山形に実力差がある、ということすら、あれだけ通っているのによくわかってらっしゃらないんじゃないか、という気がして仕方がない。

よくわからないままに、とりあえず何でそうなるかはわからないけれども、それぞれをスゴイという風には思うみたい。

まあ、誰かが居眠りした、とか、大きなミスがあった、とか、そういうのはわかるでしょうから、何かしらの手掛かりをキャッチして、それらしく言葉をまとめているのだろうけれど、判断の信頼性は低いと言わざるを得ないと思うんです。で、それは、たぶんご本人も自覚していないはずがないと思う。

「名前さえ出してくれたら私たちは嬉しいです」という風な構造に乗っかることで、どうしてそんな風にいえるのか信憑性の薄い感想が大々的に発表され続けてしまうとしたら、やっぱり、誰か止めろよ、ということになると思います。

引くに引けないんですかねえ……。

この公演は五月蝿い人が聴いていそうだから慎重に書こう、こっちは誰も知らないだろうから好き勝手しても大丈夫、とか、さじ加減の調整でどうにかなる段階じゃないと思う。

まあ、東京にいたら、自分が聴いた同じ演奏会について、この人こんなこと書いてるよ、というのは日常茶飯時でしょうから、そういう人なんだ、ということで、特に干渉せずにほっとくのが吉。そういうことで既に決着している案件なのかもしれませんが、「地方」を渡り歩かれた日には容易に露見せず、エライ迷惑するじゃないですか。どうしてくれるのよ(笑)。

[世の中はそういうものだ。一定数、あぶなっかしい感じの人が混じっており、そういう風にしかなりようがないとわかっているから、通常、音楽団体は、どういう批評が出ても、それはそれとして、いちいち公式に取りあげたりはしないわけですね。いい反応にせよ悪い反応にせよ、ひとつひとつ信憑性を精査してたらキリがないからね。いずみホールさんも、「批評で取りあげていただきました!」って、あんまり安易にやらないほうが安全だと思いますよ。広報さん、世の中ってそういうものなのよ。]