プロコフィエフの7番のポリリズム化(グールド)

グールドは演奏中ずっと左右に振り子のように揺れていて大変目障りなわけですが(笑)、たぶん、楽譜の指定の拍子とは違うビートを刻んでいるんだと思う。

6/8の第1楽章は8分音符4つずつでカウントして2小節を3分割、3/4の第2楽章は8分音符3つずつでカウントして各小節を2分割しているんじゃないだろうか。7/8の変拍子で有名な第3楽章は、ちょっとわかりにくいのだけれど、どうも8分音符4つずつでカウントして、ほとんど小節縦線とシンクロしない揺れ方をしているように見える。(本当にそうしているのだとしたら、8 × 7 = 56 だから、56拍に1回=8小節に1回しか小節と身体の揺れがシンクロしないことになるが……。)

単線的な変拍子など単純過ぎて面白くない、ということでもあるし、プロコフィエフをそれらしく「鳴らす」のはカンタンプーでつまらない、数え方に一手間加えてしまおう、というグールドらしいやり方なのだと思うけれど、よーやるわ。

(この曲は、初演者リヒテルにはじまって、ホロヴィッツも面白い演奏をしている。概して虚仮威しが過ぎるところのあるプロコフィエフが仕掛けた「現代音楽ごっこ」のいたずらなんぞに負けてなるものか、何が「戦争ソナタ」であるか、バカ言っちゃいけない、ピアニストの面子[←メンツと読みます、ごめんね(笑)]にかけて「快適な音楽」の範疇に収めてやろう、と、演奏家の征服欲をそそる作品だったようですね。

こんな風に演奏家に「弄ばれるスキ」のあるところが、プロコフィエフの弱さでもあり、人気の秘訣でもあるのでしょう。言葉は悪いがクロウト筋の人って感じがする。)