補足:酒宴と構造

ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌

ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌

年末に文春から新垣擁護の本が出たあと、テレビが一斉に彼を使うようになったのは、講談社から佐村河内本が出たあと、彼のわらしべ長者的躍進がはじまったのと似ている。

これは、「たくましさ」といった精神論の語彙で語るよりも、世の中のしくみを垣間見せる兆候と捉えたほうがいいのではないか。かつて佐村河内に与えられた「天才」なる称号が、今度は新垣に与えられている、というのも、何やら方程式の形式的操作を思わせるではないか。

出版社(とくに大手)には可愛くしっぽを振る、というのが習い性であるような精神論で生きている人文家には、そういう事情が見えないのだとしたら、まことに残念。

どうやら我らが母校・阪大では「アスリートに学ぶ」という名目の自己啓発型軍事教練が行われているようだが (http://toyokeizai.net/articles/-/56912)、

大学人が脳味噌の筋肉(or脳味噌と筋肉←本当に相関するのか?)をスピリチュアルに鍛えている間も、世間は数学的精緻さで稼働している。

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

ちなみに光文社の新訳「饗宴」は、人文家たちが賛美して止まないシュンポシオンなる古代ギリシャの男性共同体の通過儀礼を訳者が図入りで詳しく解説しており、なかなかキモい。人文家必読であろう。