加藤尚武『「かたち」の哲学』は、デカルトを位置づけ直したり、主に参照されるのは近世の知覚論と哲学だけれど、そういえばギリシャの数学が砂の上に図を描きながら語られた、というときの「図」は、アリストテレス哲学で言う「形相」と同じ言葉、どちらもエイドスですよね。
幾何学は、「かたち」の哲学のための基礎レッスンみたいなものか。
そしてあとがきを読むと、「主観」とか「表象」とか、カント先生を哲学の要とやみくもにあがめていると、加藤先生に怒られるんだ、ということがわかる。
ポモ批判っすよね(笑)。
眼科であれこれの検査を繰り返す医者(←子供のころ阪大病院へ定期的に通ったのでたくさん見てきた)も、思考実験に盲人を持ち出す哲学者や人類学者(←その大学へ入学したら文学部に生息していた)も、とっても「クソったれ」な感じの不快な上から目線の連中だった(←私はそんな阪大が嫌いだし、まあいわば、復讐のために敵の懐へ飛び込んだようなものだったのかもしれぬ(笑))と記憶しているのだが、今は随分様子が変わりつつあるようだ。
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「純粋視覚」なるものを信じられなくなったのは、科学と哲学の、進歩とは言わないまでも、めでたい変化だと思います。
自分を治してくれたお医者さんに感謝して医学の道を志す、というコンプレックスのバネ運動は、近代日本の推薦図書っぽい立身出世系であれ、平成のママさんパパさんの大好物であるところのキラキラ系であれ、そう簡単に「美談」に回収できるもんじゃないってことですよね。
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そのことを書いたのが渡辺淳一だ、というのは、いい話だと思う。
エロが書けないといい評伝は書けない、そういうものなのかもしれませんねえ……。
そういえば、加藤先生の本も、双子の姉妹に翻弄される妙に生々しい萌え系の設定とセットになっていたりする。