「大阪俗謡による幻想曲」吹奏楽全曲版の楽譜

大阪市音の定期演奏会を聴かせていただきまして、演奏についての感想はそれぞれに色々あっていいのだと思うのですが、とりあえず配布されたプログラムの曲目解説について、ひとことだけ。

団員さんが執筆していらっしゃる曲目解説は、「大阪俗謡による幻想曲」吹奏楽全曲版の楽譜が未出版であるかのように書かれていますが、既に大阪のティーダ出版から出ています。

http://www.teeda-japan.com/teeda_publishing/ooguri.html

大阪市音楽団のように既に自前の楽譜を持っているところは事情が異なりますが、これからやってみたい、という団体さんは、新作オリジナル曲などと同じように、普通に楽譜を売ってますので、ご購入を検討されてはどうかと思います。

伝え聞くところでは、最近、全日本吹奏楽連盟では著作権を遵守した運営ということが言われているようですね。

大栗裕の吹奏楽作品は、現状では、カワイから出ている仮面幻想と、ティーダ出版の上のリンク先のリストにある楽譜が正規版、ということになるようです。

大栗裕の吹奏楽曲の楽譜の扱いは長らく色々ややこしかったですが、ここ数年で、正規版を購入すれば誰でも普通に演奏できる状態がひとまず実現しています。

また、「大阪俗謡による幻想曲」には管弦楽版のポケットスコアもあって、たぶん、この曲解説は、現状で一番正確(しつこいほど詳しい)と思います。どこかで「大阪俗謡による幻想曲」の曲目解説を書かねばならない、という方には、ティーダのポケットスコアを資料として入手されることをお薦めします。

(タイトルが現行の「大阪俗謡による幻想曲」に確定する経緯は、今回の演奏会の解説の書き方だとちょっと不正確で、

「大阪俗謡による幻想曲」1956年の初稿も、なるほど楽譜の記載は「大阪の祭囃子による幻想曲」ですが、初演のチラシやプログラム、批評、報道などは、すべて「大阪俗謡による幻想曲」です。つまり、「大阪の祭囃子による幻想曲」というタイトルは*初演以前の段階で*破棄されており、このタイトルでこの作品が上演されたことは一度もないです。

このあたりについても、ポケットスコアの解説は色々書いてありますので、よろしければご一読ください。)

ちなみに、大阪音大の紀要に出した論文(http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/article/ohguri-fantasia-osaka.html)ですと、以下の記述がこの件に相当します。

樋口が「原典」と呼ぶ1956年の清書稿(以下、「1956年稿」と呼ぶ)のうち、スコアは1995年以後、所在がわからない。(注6)パート譜一式は大阪フィルハーモニー交響楽団に保管されている。(注7)各パート譜の表紙に「Fantasia "Osaka" H. Ohguri」(写真2)、楽譜1ページ目に「"Fantasia" 大阪の祭囃子による」(写真3)と書かれており、作曲時点では、このタイトルが想定されていたと思われる。神戸での初演以後の資料では、日本語タイトルは現行の「大阪俗謡による幻想曲」に統一されている。初演を準備する段階でタイトルが変更、確定されたと思われる。