ホルストはオタクである

  • 大英帝国の首都ロンドンの女学校教師 → 世界のすべてが手に入る情報集積都市のインドア系中間層、思想的にはおそらく穏健・中道だが、後年かなりスピリチュアルに傾いたらしい
  • パリ直輸入の現代音楽コンサートに通うのが趣味 → これぞまさしくデータベース消費、音楽史上初の寡黙系ドビュッシー、肉食系ストラヴィンスキー……新音楽は萌えキャラの宝庫
  • 友人ヴォーン=ウィリアムズに誘われて民謡採集 → 彼にとってのアウトドアは傍観者の考現学とコレクター気質のアマルガムである可能性高し
  • 神話と宇宙論が一体となる大管弦楽組曲を制作 → 引きこもり系想像力の突然変異がSF大作を生み出した!

ということで、グスタフ・ホルストはオタクの元祖である、というのが、前にあれこれ調べた私の当面の結論です。

そういう切り口で評伝をまとめると、新書が一冊できるんじゃないでしょうか。

ただし、遺族が情報をがっちり管理している気配なので、へそを曲げられると書きたいことが書けなくなる危険がありそう。宮沢賢治について、遺族のコントロール圏外で研究をやるにはどうすればいいか、というのに似た戦略が、ホルスト研究には必要だと思われます。

[追記]

だから、もしこれが現在の日本の出来事なのだとしたら「オタク」と形容されて不思議ではない人物が、これまでどのようなカテゴリーで論じられてきたのか、ということが知りたい。

ホルストや惑星は、その後の英米ではサブカルチャーに接続しているのか、いないのか。もっぱら吹奏楽編曲で人気のクラシック系作曲家、というのが、欧米の吹奏楽でも成り立っているのかどうか。ドビュッシー、ムソルグスキー、ホルストをシンセサイザー編曲する冨田勲は、「海外でも高い評価」ということ伝えられている印象があるけれど、どこの誰がどのような文脈で評価してきたのか、等々。

……やっぱり、大変そうだけれどやり遂げたら何かになりそうな手法となると、吹奏楽と冨田勲を中心とするホルスト受容史の調査だろうか。

「ディレッタントの国イギリス」神話の系譜学。

吹奏楽でホルストに馴染んでいて、学部は英国史か英文学でCSの洗礼を受けてサブカルチャー論もOK、今は音楽学をやろうとしています、という人なら、できるんじゃないか。英語の世紀らしい研究テーマで、いいんじゃないか。

現代の「神話」を批判するでもなく茶化すでもなく研究する方法が見つかったのだから、どんどん追随して人文学をもり立てよう。