補遺:神話と伝説

上のエントリーで書き漏らして、でも、別途メモしておきたいことを短く簡単に。

話法としての神話(mythos)については、バルト「神話作用」が有名ですが、もうひとつ、話法としての伝説(legenda)というのもありそうな気がします。記録 chronicle に記載されない「名もなき偉人」のお話ですね。

雑駁な整理ですが、「戦後」と呼ばれた昭和後期は、「戦中」の神話の膨張への反動で、「名もなき偉人」話法が好まれた。科学技術への期待からプロジェクトXに至る流れは、それじゃないかと思う。山口昌男にも、中心と周縁だけじゃなく、敗北とか挫折にフォーカスする仕事がありましたよね。大栗裕とかさかんに言って、三谷幸喜を断固推す、と思ってしまう私は、まあ、こっち派なんでしょうね。

そしてどうやら、90年代から神話話法が台頭してきた。

どうも、いまいち個人的には馴染めないのですが、少なくとも20年間続いた世の趨勢として、21世紀への世紀転換期は、「話法としての mythos」の時代だったんでしょうね。

あんまりやってると、ホンマに「軍靴の足音」かもしれないと怖くなっちゃって、この路線に舵を切ったご本人たちが、最近は、なんとかブレーキをかけようと焦って転向者続出のようだが……。