事務職員の戦闘服

あなたの学校の職員さんは、どんな服装でお仕事をしていらっしゃいますか?

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先日、学生食堂で「お久しぶりです」と声を掛けられた。見顔見知りの卒業生が、ビシっとスーツを着込んで「今はここで働いています」と言う。

そういえばここの学校の男性職員さんは、昨今の風潮でノーネクタイではあっても、仕立ての良いスーツ姿が基本になっているようだ。

以前、喫煙コーナーで職員さんたちのこんな会話が聞こえてきたこともある。

「ヨレヨレのスーツを平気で着ていた○○くんも、結婚して、やっと身だしなみに気を遣って、職員らしくなってきたね。彼は結婚してよかったと思うよ」

等々。

教員や学生の身なりは千差万別ですから、そうなると、姿形の時点で事務職員さん(男性)は学内で妙に目立つ(笑)。内外の諸問題と最前線で身を挺して闘う「戦闘服」な感じがなきにしもあらず、なのであった。

(喫煙コーナーには教員も学生も集まってくるので、あまり、「大学防衛軍」の機密(?)に触れる話をしないほうがいいとは思うけど……。)

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そして振り返って気がついたのだが、私がお世話になっている別の女子大は、やはりここも職員さんの多くが卒業生だが、ということは、ほとんどが女性であるような職場で、各種受付コーナーの向こう側とこちら側の見た目は、ほとんど違いがない。

虚礼廃止、というかけ声がひところさかんで、大学の先生たちは、今では随分、ラフな服装をするようになっていると思うのだが、

(いわゆる「グローバル」にインターナショナルな研究者集団とつきあっていれば、みんな、そういうものだし、そもそも(私学はともかく)公教育で生徒・学生に制服を着せる習慣は、今どれくらいの国で残っているのだろう、ということでもある)

男性職員さんの「スーツが基本」という風習は、結果的に、大学の運営努力が求められて、役人さんや様々なビジネスマンさんと交渉するときに、かえってそのほうが好都合である、みたいな形で、むしろ、誇りとアイデンティティ(俺たちは大学のなかで最も「意識が高く」「仕事ができる」)の拠り所になりかけているようにも見える。

まあ、いってみれば、往年の「不良さん」、もうすこし近い時代の言い方では「ヤンキーさん」は、特徴的な着こなしを誇示することがあって、周囲はそこから様々にメッセージを受け取ってしまったりするのだけれど、当人の着こなしは、おそらくそれほど単純な因果論で説明できるものではないのだろうし、まして、「生活委員の服装チェック」みたいのは、いかにもアホらしい。

大学で、やたらバリっと決まったスーツ姿の人をみかけたら、脳内で、「ツータックのラッパズボン、インナーには龍の刺繍、ポマードテカテカのオールバックで額に剃り込み、眉毛は細く剃ってしまう」(←おじさんが中学生だった頃はそんなんが流行ったのです)が、今はこうなったのか、と思っておけばいいのでしょう。

事務職員の男子諸君が「俺たち大学防衛軍」と自らをアイデンティファイするに至る物事の成り行きのうち、どこをどうしたら何がどの程度に変わるのか。ユニークなファッションが展開するのは、今も昔も大学キャンパスの常。ぼんやり眺めながら、のんびり考えることにします。