吹奏楽の楽器編成

大栗裕の吹奏楽曲は、(まだ)世に出ていないのを含めると20曲くらいあるが、各曲の楽器編成を書き出してみると、色々考えさせられた。

1960年代から1980年代は、シンフォニックバンドに向けて各団体の楽器編成が少しずつ変化しているし(一番わかりやすいのは、サクソルン系のBaritoneやEs Bassがすたれて、EuphoniumやB Bass in C に一本化されていくこと、大栗裕の没後のことだが最近では吹奏楽でも記譜だけでなく、本当にオケと同じC Bassを使うところが出てきつつあるらしい)、それだけじゃなく、そもそも吹奏楽では管弦楽とは少し違った楽器編成についての考え方が成り立ち得る(FagottをBs ClやB. Saxと組み合わせた木管低音群と考えるか、あるいはオーケストラ風にObと組み合わせたダブルリード群と捉えるか、Trumpet と Cornet を同族と捉えるか、それとも Cornet を木管と組み合わせるか、あるいは、Saxセクションは木管としてClと組み合わせるか、独立セクションと考えるか、あるいは、TpやHrと重ねてブラスセクションの補強に使うか、等々)。

軍楽隊とか、アドフル・サックスの影響下にあったパリ・ギャルドとか、イーストマン系ウィンド・アンサンブルとか、日本の吹奏楽と割合はっきりしたかかわりがあるところだけでも系譜がいくつかあるようだし、戦後のコンクール吹奏楽には、徐々にアメリカの楽譜業者によるバンド編成の分類に準拠していく流れがあるようだ。吹奏楽の楽器編成を通覧すると、かなり多くのことが言えそうに思う。

音響論としての音楽論、ということで、ポピュラー音楽の場合は使用機材(楽器のみならず録音システムやスタジオの構成を含めて)が詮索されつつあるじゃないですか。

同様に、吹奏楽でも、せっかくだったら「サウンド」に直接関わるようなところで研究がやりたい、と思う人は、楽器編成に関わるところで課題を見つけるといいんじゃないだろうか。