オープンリールテープの手製インデックスはコピーできない

ラジオ、テレビのドラマ音楽のオリジナルテープを扱っていて気がついたのだが、オープンリールテープの編集は、比喩ではなく実際にテープを「切り貼り」するので、あっちこっちに白いテープが貼ってある。

四五十年前のテープなので、粘着力が落ちて、再生しようとするとハラりとそこで切れてしまったりして……、そうすると、新たにつないで、再びテープをセットして続きを再生で、なかなか根気のいる作業になる。20分くらいの録音が20回くらい切れるので最後にたどりつくのに2時間かかったりするのだが、

考えてみれば録音技術者の人たちは間違いなく今私がやってるのと同じかそれ以上の時間をかけてこのテープを編集したに違いないのだから、横着を言ってはいけないだろうし、そういうものだと腰を据えて取り組むと、ちょっとずつ様子がわかってきたりもする。

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これは話としてよく知られていると思うのだが、編集の現場では、この白いテープをインデックス代わりにしていたようだ。

NHK大阪のスタッフが本番用に編集したテープの場合、M1, M2...の間は、20cm程度の長いテープで区切られている。これは、音楽と音楽の間に空白を入れると同時に、あとで曲の頭を探す目印になる。

この長い白テープの用途はわかりやすい。

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一方、曲の途中にも、ときどき一度切ってから再び貼り合わせた箇所がある。

ところが、こちらは、ヘッドが読み取る表側の面は元通りにつながって空白などが入らないようになっている。(短い白いテープを裏側から貼って切れ目を修復してある。)

そしてテープの切断面はセオリー通りきれいに斜めになっていて(こうすると、別の箇所とつないだときに「プチ」ってならないらしい)、事故でテープが切れたのではなく、意図的に「切って編集」したようだ。

音楽を録音したあと、それを映像と合わせる最終段階での調整があったんだと思う。

[切ってしまった部分をどうしたのか、個々に確認しないと、今はよくわからない。保管時に元に復元したのか?と当初は思ったが、あとで復元できるようにテープを切るのは、よく考えたら割と面倒だし……。]

そしてそのように思っていくつかのテープを聴いていくと、作品ごとにやたら切り貼りしているものと、ほとんど曲間には編集の跡がない作品が比較的はっきり分かれるようだ。

シーンごとに音と映像のタイミングを細かく調整するドラマと、音楽はある程度の長さ流れ続けているドラマがあるらしい。作品の特徴なのか、ジャンルなのか、演出家のスタイルなのか、そこまではわからないが……。

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ということで、白いテープの編集点はとても興味深いのだけれど、でも、これはデジタル化したり、他のテープにダビングすると、もうわからなくなってしまうんだよね。

録音テープは音響の「再生産技術」の代表格で、コピーしても、多少の劣化に目をつぶれば、「音響」は同一ではあるのだが、やっぱりダビング、コピーでは失われる情報があるようだ。

(現代音楽系のテープ音楽にはオリジナルが残っているものもあるようなので、このあたりの編集の実際まで調査すると、まだ何かわかることがあるかもしれないね。)