カセットテープの普及時期

カセットテープをあの規格で最初に作ったのはフィリップス(1962年)で、1965年に特許が無償公開され、1966年にはTDK(東京電気化学工業だからTDKなんですね)が日本で初めて製品化、カセットといえばTDKという感じになっていたように思うのだけれど、本格的に普及したのがいつ頃で、何がきっかけだったんでしょうね。

少なくとも、大栗裕がもっていたカセットテープで時期を特定できる一番古いのは1972年なのだけれど、ラジオのエアチェックとレコードのダビングに使っているのがほとんどで、演奏会の記録などが入ったものは、オープンリールからのダビングと、他人からの寄贈ばかりだったりする。

大栗裕は1982年に亡くなったのでウォークマン(1979年)をほとんど知らずに終わったこともあり、録音テープといえばオープンリールで、カセットはサブだったのかなあ、という印象を受ける。

なんとなく、オープンリール=パソコン、カセット=スマホ、という感じがするのだけれど、70年代以前からオープンリールでずっと仕事をしていた人たちは、たいていそんな感覚だったのだろうか。

ただし、カセットテープをスマホ的にポータブルなメディアと考えるのはウォークマンが流行ったことによる80年代以後の感覚を投影した後付けの可能性があり、むしろ70年代にはFM音楽番組のエアチェックが大きかったかもしれない。

大栗裕は、FMをエアチェックしたテープに新聞の番組欄の切り抜きを添えて、録音日と録音機種名を記録していたりして、とても几帳面に整理している。

吉田秀和「名曲のたのしみ」は、NHkが視聴者に提供を呼びかけると局に残っていなかった録音で8割方がそろってしまったらしいけれど、大栗裕も2、3回分エアチェックしている。

やはり録音テープには、レコードとはちょっと違う何かがあるようだ。