全巾・半巾/Mono・Stereo

放送局がオープンリールテープのケースに添えたデータシートは、「19cm/s・9.5cm/s」「全巾・半巾」「Mono・Stereo」というようなチェック項目があったりする。

オープンリールの録音方式が色々あって、それでこういうことになっているようだ。

1トラック1チャンネル

1本のテープに1トラック分しか書き込めない機械が最初の頃はあったと思われ、そうすると話は単純で、「1トラック1チャンネル」で、

  • 全巾モノラル

ということになる。

1トラック2チャンネル

でも、LPレコードのステレオ方式があっという間に普及したわけで、これと同等のことをやろうとすると、1トラックに2チャンネル必要で、放送局などのプロ仕様の機械は、これが標準だったらしい。

そうすると、

  • 全巾ステレオ

になる。

T1: L
T2: R

[追記]

ただし、大栗裕が放送局で制作にかかわった音楽の録音は、あとで再度確認すると、ほぼすべてモノラル録音だとわかった。テープデッキの性能としてはステレオ録音が可能だが、1970年代までラジオ、テレビのドラマはモノラル音声で放送されたので、録音現場もその前提でモノラルで収録されていたようだ。

民生機

一方磁気テープは高価だったので、市場に出回る民生機は、2つのトラックを独立して使って、1本のテープに2倍の長さを録音できるようになっていたらしい。

これが「半巾」で、当然モノラル録音になる。

  • 半巾モノラル

T1: A →
T2: B →

ただし、これだと片方のトラックが終わったあと、いちいちテープを最初まで巻き戻さないといけないので、しばしば2つのトラックに逆方向から録音されている。

  • 半巾モノラル(リヴァースあり)

T1: A →
T2: ← B

大栗裕のプライベートユースのテープは、しばしばこの形で録音が入っている。

2トラック4チャンネル

そして、半巾をさらにそれぞれ2つのトラックに分けて、テープを2トラック4チャンネルで読み書きすれば、テープをさらに節約できる。

ただしこのような「半巾」の「ステレオ」では、右チャンネルと左チャンネルをトラック1と3、トラック2と4、というように、間をひとつ飛ばして割り振っていたらしい。

なので、民生機特有の

  • 半巾ステレオ(リヴァースあり)

はこういう風になる。

T1: A(L) →
T2: ← B(R)
T3: A(R) →
T4: ← B(L)

大栗裕が持っていたテープでも、この形で使われているものが一本見つかっている。

(一本だけしかないのはこれが誰かからもらったテープで、大栗自分はこういう風に録音できる機種を持っていなかったのかもしれない。)

理屈のうえでは、

  • 1/4巾モノラル(リヴァースあり)

T1: A →
T2: ← B
T3: C →
T4: ← D

ということもできそうに思うのだが、そこまでややこしくトラックを切ったテープは、大栗裕の手元からは見つかっていない。本当にこういう風に録音できる機種があったのかどうかも、私にはよくわからない。

[たぶん、こういうまとめで大丈夫だと思うのだけれど、オープンリールテープのことは、このあたりがとてもややこしそうです。]