天使は世界に先行する

ハイドン「天地創造」は、創世記とミルトンがネタ元であろう、と何を読んでも判で押したように書いてあるのに、少なくとも日本語文献では、どうして天使たちが天地創造を語るのか、どうしてこの3人の天使なのか、ということについては、誰も何も言っていないようだ。

どういうことなのだろう?

神が世界を創造する前から天使たちがいて権力闘争をやっていた、というのは、なかなか面白い世界観(メタ世界観というかプレ世界観)だと思うのだけれど……。たぶん、王権神授説みたいのに異議を申し立てるときに、そのような伝承を知識人(たち)が利用したということですよね。

どの天使をオーソライズして、どの天使を正典から排除するか、というのはそれぞれの宗派で色々あるようで、神じゃないから図像を作ることもできるし、天使たちは、聖母と並んで、一神教っぽくないですよね。異教徒の目には、多種多様な仏像が作られたアジアの状況と、それほど違わない何かであるようにも思えてしまう。