揺れと賭け

関東大震災が日本の保険制度の整備、発展を後押ししたことは、少し前に流行った地震関係の書物を読んで知っていたが、震災直前の1923年春に、旧競馬法で馬券が合法化される、ということがあったらしい。

モダニズムの根無し草感覚が賭けと相性がいいのは直感的に納得できてしまいそうだが、この島の、少なくとも大衆風俗レベルでは、大地が揺れると賭けが加速する、というところがあるのかもしれない。出世作「夫婦善哉」の最初に関東大震災を配した織田作之助が競馬好きだったのは、さもありなんと思えてしまうということだ。

阪神淡路のときや東日本のときは、どうだったんでしょうね。あとで痕跡を消してしまうけれど、柄谷のカント読解は群像の初出では地震と「共振」していたし、最近はカジノ法案に熱心な政治家とかいるようですが。

(そういえば高度成長の昭和後期は、大地が揺れなかったはずはないのに、地震で時代を区切る言説をあまり発生させていないですね。)