後始末

吉田秀和が20世紀音楽研究所の所長という肩書きで現代音楽祭をやった、とか、『音楽紀行』で1953/54年当時の欧米の現代音楽事情が詳細にレポートされている、とか、というのは、1960年代に生まれた私たちにとってはもはや伝説のようなもので、物心ついた1970年代には、過去の「祭り」の痕跡を示す楽譜や音源や回想録のようなものしか周囲には見当たらなくなっていたように思う。(70年代に入って、かつての現代音楽の闘士の多くが身辺雑記風のエッセイで日銭を稼いだ。)

そんな1970年代に、今やFMラジオと新聞・雑誌の看板コラムで名曲名演奏を解説する大御所になった吉田秀和と「現代音楽」のつながりを確認する手がかりになっていたのが『現代音楽を考える』という単行本だと思う(本屋で普通に売られていた)。

これは万博が終わったあとで芸術新潮に書いた連載だったんですね。

吉田秀和は、1970年と翌年に芸術新潮にベートーヴェンのことを書き(1970年はベートーヴェンの生誕200年)、そのあと2年間、現代音楽の連載が続く。これが『現代音楽を考える』にまとめられるわけだが、祭りの後始末、という感じがします。