日本におけるオペラ「真夏の夜の夢」

東京から聴きに来た人たちが、口々に、これはブリテンの珍しいオペラである、という前口上から感想を書き始めるのが、私には理解できない。

こんなに珍しいオペラを6日間も上演するのは凄い、という誉めの前振りとして便利だからだと思うのだが、そもそも会場で配布されたプログラムに、「佐渡裕は関西二期会による上演を若い頃副指揮者として体験していたのではないか?」と書いてあるじゃないですか。

その後関西では、数年前に大阪音大のカレッジオペラハウスでもやっている。過去30年で3回目だから、少なくはない。

さらに遡ると、日本初演は1962年の二期会(若杉弘指揮)で、これは、当時NHKがラジオとテレビの両方で放送しているのだから、イタリア歌劇や何かでオペラの面白さに目覚めた昔からのお客さんにとっては、むしろ、「懐かしい」かもしれない。

ブリテンやメノッティは、1950年代から1960年代にかけて日本でかなり上演されているし、1970年代以後も取り組みは続いていますよね。若杉弘は、びわ湖ホールの青少年オペラとして、「えんとつ掃除」を林光の「森は生きている」などとともに定期的に取り上げていましたし。

日本のオペラは、実際に見た人たちが今も存命な戦後だけで考えても既に70年の歴史がある。これを蓄積と考えずに、都合良く過去を忘れて、リセットし続けるようなモノの言い方をするのは、いいかげん止めた方がいい。

記憶容量が小さい人間は、通常、バカと呼ばれるのではないかしら。