君は「顎足付」という言葉を知っているか?

この人、いつかきっとやらかすだろうなあ、と思っていたよ。

日本のオーケストラが海外公演に行くとき、現地の聴衆に聴いてほしいと思ったら、事前にその国のジャーナリストを日本に招いて記事を書いてもらうぐらいしないと相手にしてくれない。そんなお金ないっていうけれど、最初からツアーの予算にそのくらい組み込むべきではないのか。

これを日本における「東京」と「地方」に当てはめるとこうなる。

地方のオーケストラが東京で公演するとき、東京の聴衆に聴いてほしいと思ったら、事前に東京のジャーナリストを地方に招いて記事を書いてもらうぐらいしないと相手にしてくれない。そんなお金ないっていうけれど、最初からツアーの予算にそのくらい組み込むべきではないのか。

こういうのを「顎足付」と言います。古くからの慣行で、そのような「中央と地方」の権力構造は、興行がアウトローな世界につけこまれる恰好のポイントでもありました。

(「旨い話」が「危ない橋」を渡るのと引き替えであるケースがゴロゴロ転がっているのは、決して、国内だけではありません。過去のエピソードがいくつも語り伝えられていますし、今も、当人がしっかりしていないと、色々な人が寄ってくるのは変わらないはずです。)

この人は、こういう構造を脱却するために、興行界がこれまでに実に多くの取り組みを積み重ねて、そして今日があることをご存じないようですね。世間知らずの、躾ができていないお嬢さんだ。

「国際派」ジャーナリストがある年齢に達したときに相手を自陣に引き込むための手練手管に熱中しはじめるのは、相手の懐に飛び込もうと色々やって、結局うまくいかずに己の限界が見えたときに、それを自分の問題ではなく、「私たち」の問題であるかのように責任転嫁する心理だと思う。

若い頃に血気盛んだった人が陥りがちな罠です。

今後、このジャーナリストが地方のどこかの公演の記事を書いていたら、「この人、きっと食事代や宿泊代を主催者に要求して平気なんだろうなあ」と思うことにしよう。

この人はまともじゃない、というだけでなく、こういう人を呼ぶ主催者もまた、まともじゃない。業界を健全化するための、いい目印になりそうだ。

あごあし‐つき【顎足付(き)】

食事代と交通費を先方が負担すること。「―の接待旅行」

あごあしつき【顎足付(き)】の意味 - goo国語辞書

(武士の情けでリンクは張らないが、大学における humanities が凋落しているのだとしたら、それは、世間でこういう人が放置されているのと無関係ではないと思う。)