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無伴奏の台詞

主要人物が死ぬ前に必ず幻影を見るのはどういう意図なのか、ここだけは不審なのだが、今回は「軍勢をひとつの塊と思うな……」ですよね。見直すと、ここでBGMがピタリと止まって無伴奏になる。(「上田へ帰りたかった」のところは再び例の昭和風のギターが鳴っている。)

音楽劇の急所の台詞でオーケストラが止まる、という演出は、誰が最初にやりはじめたんでしょうね。リヒャルト・シュトラウスにあるのは記憶していますしプッチーニにはいかにもありそうだけれど、ワーグナーやヴェルディにもありましたっけ。主役の登場の第一声が無伴奏、というのは、オテロだけでなく、ベッリーニの Casta diva の前のシェーナとか、むしろイタリア・オペラの一つの型だと思いますが、ドラマ終盤の急所が無伴奏、というのは、もしかすると、一方でメロドラマ的な手法であり、他方で近代の無音楽の台詞劇(新劇)を意識しているのではないかと思うのですが。

(こういう話は、若者を高い意識で啓発する人たちには、泰平の世になっても「策」を考え続けて乱世にしか生きられない旧人に思えるかもしれませんが(笑)。)