先の京響のロームシアターの演奏会を、『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』の能登原さんが聴きに来ていた。ロック・ミュージシャンの交響曲ということで、佐村河内から岸田繁へ、という流れを私は事前に漠然と考えていたので、なるほど彼女が来るのは筋が通っているな、と思った。
キワモノとして葬り去られることのない形で、いわば「オルタナティヴ・クラシック」を育てるとしたら、そういう文脈を構築していいだろう(吉松隆が佐村河内/新垣を強力に擁護したときに構想したのはおそらくそういうヴィジョンのはずだ)。はたして、いつか誰かが『KYOTOが鳴り響くとき』という書物を書くことになるのかどうか、わかりませんが。
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一方、『くるりのこと』を読みながら、もしかすると岸田繁は指揮者の山田和樹と同世代じゃないか、と思って確認すると、岸田が1976年生まれ、山田が1979年生まれ。どちらも1970年代後半/昭和50年代前半生まれ、と見てよさそうだ。タイアップJ-POP全盛期(それは「月9」全盛期でもある)の体験をもとにポピュラー音楽で論陣を張った1970年代前半/昭和40年代後半生まれとは見ている景色が違っていて、そこが頼もしい、と私には思える。彼らはクラシックとポップスというジャンルの境界についての意識が違うし、聴き手/消費者の立場に籠城する(そして学会でツルんで肉を食う(笑))のではなく、自ら声を発し、制作者の立場を堅持するところが、80年代を引きずった90年代の音楽産業をゼロ年代にオーソライズした「キラキラ系」とは違うカルチャーだと思う。
山田和樹はこの交響曲に興味を持たないだろうか? 誰か彼にこの曲を教えてあげてください。
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もはやゼロ年代ではない。とっちらかった音楽シーンをできるところから修復しましょう。
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追記:
「ヒロシマ」や京都との関係で言うと、山田和樹の拠点が東京ではなく横浜のオーケストラで、東京の拠点がオーケストラではなく合唱団(東京混声)だ、というズレが気になる。広島・京都・横浜という東京に対するオルタナティヴが新しいカルチャーの当面の足場になっているかのようだ。山田の欧州での職場がジュネーヴやモンテカルロだ、というのが同じ文脈なのか、そうではないのか、まだ、わからないけれど。
追記2:
そしてこの新しい動きは、渋谷に事務所を構えて、この島のカルチャーを「ニッポン」とカタカナで表記する戦略で色々なことを書く佐々木敦の時代が終わったということでもあると思う。「ニッポン」は2010年代、東北の地震以後の現在において、再び「日本」に戻った。
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