転倒防止

飛翔を経た着地がヘーゲルの精神現象学にも似たロマン主義の様式特徴であり、傷と治癒が宮台神学の骨法だ、というのはいいが、着地するためには飛ばねばならぬ、癒えるためには傷つかねばならぬ、と転倒した論法で通過儀礼を正当化するのは、悪しき教養主義である。

転んで頭を打って、それが原因で脳に障害が残る。

成人病の治療と予防が高度に発達した結果、癌が直接の死因となるケースが少しずつ減っているように思われる最近の老人医療では、外科的治療が困難な脳をめぐる広義の緩慢な事故というべき症例が問題になりつつあるみたいですよ。

真田丸の秀吉も花見の宴で桜の木から落ちた。出会いの場面を反復する感動的な小日向と堺の芝居はその回の最後だ。源次郎はその20年越しの後始末で命を落としたと言えなくもないわけで。

青春のロマン主義には、不死身の人間はいない、というカウンターが当たる。それが人生なのかもしれない。