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観劇体験

それにしても、東ベルリンの国立歌劇場のばらの騎士(私も大阪で観た)が最初のオペラ体験だ、というのは、やっぱり一回り若いんだなあと思う。

外来引っ越し公演といっても、しょぼいのと凄いのがあって、なおかつ、国内にも本当にナショナル・オペラハウスが出来てしまう、という風景から出発した世代は、どんなオペラハウスであっても来てくれるだけで有り難く、すべてが光り輝いて見えるなかで、実現できるかどうかわからない「夢」や「希望」として「第二国立劇場」が語られて、そこへのステップとして日生劇場や東京文化会館が建てられた時代とは、何かがちがう。わたしたちは、その違いを、まだ正確に言語化できていない気がする。アバドとクライバーのスカラ座とかサバリッシュのバイエルン州立とかレヴァインのメトとかがやってきた80年代がその分水嶺なのだろうとは思うけれど、バブル景気を直視することは、帝国の崩壊(「戦中」)を直視するのと同じくらい大変ではある。

追記:

さしあたりの凡庸な仮説としては、教養を財力で補填しながら最新技術をキャッチアップするのが劇場の標準型なのだとして、財力がある水準に達したところで、今度は教養がボトルネックになり、技術への投資と教養への投資のトレードオフに悩まされる、という感じだろうか。

百年前の帝国の崩壊が、そんな2016年に何かの教訓を残してくれているかは不明だが。