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「ソ連はキモい」

都留重人の留学記には、1940年前後の留学中に、ハーヴァードの学生がソ連のことを「It's so weird.」といった、という話が出てくるらしい。山崎正和が1980年代の回想のなかで披露している話だが(オーラルヒストリー、220頁)、「ソ連はキモい」というのは、冷戦時代の西側の気分をわかりやすく言い表しているように思う。

東浩紀が「他者」の語を避けて「観光」概念を立てたり、稲葉振一郎が「政治の理論」を慎重に書き進めるのは「ソ連はキモい」という言説がある(あった)ことを前提にしているだろうと思う。

ゼロ年代がなんとなく薄い感じがするのは、「ソ連はキモい」という言説を見て見ぬふりしてスルーしたところに、ヴァーチャルな未來を開くことができるかのように振る舞ったせいではないか。SEALDs への連帯で政治を動かそう、の2015年は、「キモい」世界をスルーして「つながり」でアソシエーションをアップデートしているつもりが、実は一番古くて「キモい」筋が動いていた。

「キモい勉強」で共同体を出よう、という千葉雅也のメッセージは、その文脈を踏まえて読んでいいのでしょうか。浅田彰の「逃走」が新左翼の「闘争」のアップデートだったように。