飯尾洋一さん、echo chamber は反響室で、オルゴールや音叉の振動を増幅する共鳴箱 resonance box ではありません。ソーシャルメディアが小さなメッセージを増幅するのが問題だと言っているのではなく、閉じた空間で織りなされる複雑な反響が問題になっており、それは、この比喩を音楽の現場に引きつけるとしたら、音響編集で言うリバーブの功罪、もっと直接的には、音楽専用ホールのような特殊な空間にオーディエンスを囲い込むことの功罪が問われていることになります。
(「オーケストラのペダルを踏む」と形容される武満徹のサウンドは、いわゆる現代音楽では例外的にクラシック・ファン、オーディオ・ファンに広く好まれているけれど、いつまでそんなんをありがたがるつもりですか、という話とつながっていないこともない。オペラ・シティのタケミツ・メモリアル・ホールや溜池のサントリーホールや渋谷のオーチャードホールは、クラシック・マニアのためのエコー・チェンバーなわけですよ。)
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英語が読めなくても、添えられている画像を見れば違いがわかる。
こっちが反響室、エコーチェンバーで、
こっちが共鳴箱。
Acoustic resonance - Wikipedia
特定周波数の増幅(20世紀の得意技)と波を複雑に合成する反響(SNSで話題になっている事柄)は、音響学的にも別物ですよね。
(echo cchamber を誰かが「共鳴箱」と訳してその訳が広まり、そこから何か独特な議論が展開してしまうとしたら、それこそが「エコーチェンバー効果」ですね。)