結果を面白がる前に

タイトルと内容紹介から判断すると、こっちの本が政治学としての立場や方法を明示した出発点なのだろうと思われる。本気で「音楽学者も負けてはいられない」と対抗意識を燃やすのであれば、そのような成果をあげることができた前提、先方の装備を具体的に知ることが先決だろう。

文化浸透の冷戦史: イギリスのプロパガンダと演劇性

文化浸透の冷戦史: イギリスのプロパガンダと演劇性

だからまずこっちを読みたいのだが、少々高い本ではありますね。

文化政策の演劇性、という着想自体はむしろ常套的に思える。3年後に、マーケットをリサーチして、従来そのような概念を当てはめて論じられることのなかったジャズを題材に選んだところが、なかなか頓知が効いている、ということになるのだろうか。

著者が釣りたいと狙った人たちが目論見どおりに次々見事に釣られているようで、5年前に與那覇潤が「中国化」でオッサンたちを釣った故事が思い起こされる。

「オッサンたちがワアワアいってるエコー・チェンバーに反響を広げるのは案外チョロい」。そのように考える若い世代が出るべくして出てきただけのことではなかろうか。