誰が中世を「闇」だと考えたのか?

ギリシャ神話は紀元前に栄えた文明の古層だが、ローマ帝国/中世キリスト教会のラテン語文化で育った知識人たちにとってギリシャ語古典文献の解読はキラキラ輝く刺激的な「新しい知識」であり、神々と英雄たちの活躍をキリスト教的な世界観に組み入れることは、アクチュアルな問題、現代人が取り組むべき急務に思われた。

いわゆるルネサンスは、そのような都市の知識人のトレンドとして始まった、という理解でいいのだろうか?

(在外日本人というものが、昭和の24時間闘うビジネスマンにとっては自明の日常であったにもかかわらず、「就職氷河期」に国内に縛り付けられていた世代にとっては、功成り名を遂げたあとの在外研究でようやく知り得た「新事実」、「世間に訴えるべき最新課題」に見えているのと同じように。)

観察・五感の肯定であるとか、おそらく黙読・瞑想というメランコリックな態度が生み出したのであろう「内面」であるとか、ルネサンスは、有閑知識人のマッチポンプ的な一過性のトレンドに終わることなく、それこそ「誤配」的な帰結をもたらしたがゆえに、トレンドとは違う扱いを受けてはいるわけだが、そうした経緯は、おそらく中世キリスト教の「闇」からギリシャ的な「光」への転換という明快な構図に収まる話ではない。

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そんなことを考えながら見ると、やっぱり「薔薇の名前」は面白いね。