映画音楽と読み替え演出

ふと思ったのだが、「2001年宇宙の旅」で人類の誕生にシュトラウスのツァラツストラを使ったり、「地獄の黙示録」でベトナムの空爆にワーグナーのワルキューレを使うのは、20世紀末のドイツの演出家たちのいわゆる「読み替え」の遠い源流のひとつだったりしないだろうか。

クラシック音楽(とりわけドイツの重厚壮大な交響楽)はおよそ現代社会に居場所のないオールドファッションだから別の文脈に移植してしまえ、という発想は、劇場で自律的に育ったというより、映画がおそらくサイレント時代からずっとやっていたことで、映画で育った世代が文脈変換の技法を劇場に還流させて「読み替え」が誕生したと説明したほうが、わかりやすかったりするかもしれない。