大阪にオーケストラはいくつあるのか?

「4大オーケストラの饗宴」という大阪国際フェスティバルの企画は来年の4回目で一旦完結するそうだが、大阪のプロオケは4つだ、ということでいいのかどうか。

読売日本交響楽団が数年前から大阪で年3回「大阪定期」として東京の定期演奏会と同じプログラムで公演していて、先のびわ湖ホールでの「アッシジの聖フランシス」(こちらはホールと共同主催の特別公演という位置づけらしい)の圧倒的な成果も含めて考えると、大阪で定期的に公演している一番上手なオーケストラは読響だ、と言われるようになる日が来ても不思議はない気がします。(そうなると、大阪で読響の公演を定期的に聴きたい人が出てきて、「大阪定期会員」のような制度ができるようになるかもしれない。)

あと、広島交響楽団が今年だけのことでなく今後大阪でも定期的に演奏会をしたっていいかもしれない。関西から広島は新幹線でぎりぎり日帰り可能ですから、内容が良ければ、大阪公演だけでなく、関西から広島へオケを聴きに行く人が出てくるかもしれない。

そう考えると、現状で既に、大阪にオーケストラは6つあると言えるかもしれない。

(さらに山形交響楽団も、少なくとも飯森範親が大阪と山形の両方にポストを持っている間は大阪公演を続けるでしょうから、これを入れると7つですね。)

読響は、東京でどういう位置づけなのか私にははっきりしたことはわかりませんが、少なくとも「大阪の7つオケ」のなかでは圧倒的にうまいし、広響や山形響もいいところへ行きそう。選曲や演奏スタイルに惹かれて、「大阪の四大オケ」よりこっちを聴きたいというお客さんが、現状でもいるかもしれない。

「失われた20年」なデフレ・マインドの時代には、「大阪にオケが4つあるのは多すぎる、統合しろ」とか言われていましたが、むしろ、本当に上手だったり、向上心があったり、はっきりした個性をもっていたりする団体を加えて、いわばインフレ誘導気味にオケの数を増やすほうが、「オーケストラ地図」を組み替えるには有効な感触がありますね。

既にオペラのほうは、びわ湖ホールが東京どころか欧州の劇場やスタッフと提携して色々な企画を打ち出していますし、オケは4つ、「四大オーケストラ」という呼称を使っていられる状況ではなくなりつつあるのだとしたら、「四大オーケストラ」企画に一区切りを付けるのは、ちょうどいい頃合いかもしれませんね。

(その大阪国際フェスティバルは、ホールのリニューアル後は、ほぼ2年に一度のペースで東京都交響楽団も招聘していますしね。)

ただし、こういう状況は「新しい事態」かというとそうでもなくて、大阪フィルができるかできないかの頃までは、いや、できたあと70年代くらいまでは、オケの自主公演だったり、労音やホールの招聘事業だったり、オペラ団体にくっついて来たりで、結構、関東のオーケストラが関西でも公演していたことが記録を見るとわかります。

大阪のオーケストラとは大阪に本拠をおいて、関西でのみ活動するオーケストラである、というような考え方が成り立った時代(1970年代から2000年代まで)のほうが、むしろ特殊な時期だったのかもしれません。

逆に朝比奈さんは、定期的に大阪フィル東京定期演奏会をやっていましたしね。

で、音楽雑誌に「関西の演奏会」コーナーがあって、オケの定期なんかが全部レビューされて、ほぼそれ(東京の雑誌のいわば通信員的な仕事)をやる関西在住音楽評論家がいたのは、まさにその1970年代から2000年代のことであって、割とはっきり、このあたりもいま組み変わりつつあるように見えますね。

(関西では、関西のコンサートと音楽事情についでだけ詳しいおじいちゃんがいて、その人たちが「音楽評論家」を名乗っている、みたいな状況は、ほぼ命脈が尽きていると思う。おじいちゃんたちは、それがおじいちゃんのおじいちゃんたる所以ですが、なかなか自分たちの活動の意味を定義しなおさなければならない、みたいなことには気付かないみたいですけどね。)